それから約8年後。まさかの夫婦役での共演だ。「しかも監督は角川春樹さん。もう字面が頭に入ってこなくて、どうしたものかと思いました。でも私は図々しい性格なので嬉しかったです」と恐縮しきり。演じたのは澪(松本穂香)が働く・つる家の常連客で戯作者の清右衛門。妻役の薬師丸やご近所さんの浅野温子との丁々発止のやり取りが笑いを誘い、人情劇をより豊かにする。
「私としては許容範囲を超える出来事ですから、一人では耐えることができず実兄に相談したくらいです。『リラックスしてできました』とは口が裂けても言えることではありません」と襟を正して「撮影中は映画祭のお礼も改めてできましたし、薬師丸さんの角川さんへの思いも聞かせていただくことができました。カメラが回っていないところでコミュニケーションを取る時間を作ってくださったことで、長年連れ添った夫婦の空気感を出すことができました。それはすべて薬師丸さんのおかげです」。誠実で優しい変わらぬ人柄に、感謝しきりだ。