姿勢の悪いお子さん(幼児)に対して、どのように声掛けをしたらいいのかということは、保護者や子どもに接する仕事をされている方にとっては、大きな悩みだと思います。また、私は仕事柄、多くの保育士さんとお話することがありますが、その際「姿勢がすぐに崩れる子どもにできる手立てが知りたい」というご質問をよくいただきます。
その手立ても、運動を強制させるようなものでは、子どもはなじまず、またすぐに飽きてしまうため、日常の中や遊びの中で実施できることが理想です。そこで、今回は、姿勢の悪いお子さんに対して、100円ショップのボールを使った、日常の中でできる体幹筋のトレーニング方法をご紹介します。
◆姿勢に重要な体幹筋。求められるのは、瞬発力ではなく「持久力」
正しい姿勢を保つために必要なのは、体幹筋です。体幹筋とは、腹筋や背筋など、胴体部分にある筋肉の総称であり、体幹筋がしっかりと働くことで、背中がしっかりと伸びます。そのため、姿勢を良くするためには、体幹筋の筋力作りが重要になります。
ここでポイントがひとつ。一般的に良く行われる腹筋運動(寝転んだ状態からお腹の力で起き上がる運動)は、姿勢改善にはあまり効果がありませんので注意が必要です。姿勢保持に重要なのは、体幹筋の瞬発的な力ではなく持久力なのですが、いわゆる腹筋運動では持久力は鍛えにくいのです。
持久力を鍛えるには、「軽い負荷の活動や運動(例えばウォーキングのように息を止めなくてもできる活動や、おゃべりしながらできる運動など)」を「長時間(概ね20分以上)」することが効果的だと言われています。
◆実際の取り組み方法
それでは、100円ショップのボールを使って、体幹筋の持久力を向上させ、姿勢を良くすることにつながる具体的な取り組み方法についてご紹介します。
・用意するもの
(1)100円ショップで売っているゴムボール(直径20センチ程度の、幼児が座れるサイズ)
(1)(あれば)卓上机
・手順
(1)ボールの上に座ります
(2)座った状態のままで、机の上で遊びを展開する
※遊びは、ブロック、お絵かき、勉強、工作などお子さんの好きな遊びならなんでもOKです。また、手や腕を机の上に付ついてもOKです。反対に、お子さんが嫌がる活動・苦手な活動は気持ち的に集中できなくなるため、控えておきましょう。
※適当な机がない場合は、ボールの上に座ったままでボール投げをしたり、あっち向いてホイをするなど、「ボールの上でバランスを取りながら、他の活動をする」遊びを実施すれば、同様の効果が得られます。
・活動時間の目安
(1)1セット10分程度でOKです。もし嫌がらずに活動できるようであれば、2セット以上の時間座るようにしましょう。
(2)疲れてきたようなら、都度休憩を入れてください(他の遊びや姿勢に切り替える)。疲れてきたかどうかの判断は、「体をもぞもぞ動かすようになってきた」「他のモノに目が行くようになった」ということを一つの目安にしてください。
【ポイント!】体幹筋の活動をより引き出す効果的な座らせ方
(1)お尻をボールの前の方に置く(中心より少し前の方に座るようにする)
実際にやってみると分かりますが、ボールの中心より少し前に座ることで、骨盤が起こしやすくなり、それが背中を伸ばすことにもつながります。
(2)足の裏は、床につける
こういった遊びや活動を継続して行うだけで、知らずしらずのうちに体幹筋の持久力が強化され、姿勢改善につながっていくでしょう。
◆まとめ
・子どもの姿勢が悪くなる原因の一つに「体幹筋の持久力の弱さ」が挙げられます。
・体幹筋の持久力を向上させるためには、「低負荷で長時間の運動」が効果的です。
・具体的な方法として、100円ショップにある直径20センチほどのゴムボールの上に座り、遊びや工作などの活動を行うことで、体幹筋の持久力が高まります。
・ボールの上に座らせる時に、「ボールの中心より少し前に座るようにする」「足の裏を床の上につける」ことで、体幹筋がさらに活動し、姿勢改善においてはより効果的となります。
・持久力が育つには、時間がかかるものです。そのため、お子さんの好きな遊びを取り入れるなど、楽しみながら継続できる取り組みが大切になります。