「お気に入りの店があるなら、今行って」…閉店決意のたこ焼き店主の投稿が「心に響く」と話題

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 「貴方(あなた)のお気に入りのお店がまだ存在するのなら、『今』行ってあげてください」-。新型コロナウイルスの影響で閉店を決めた、京都市のたこ焼き店店主のツイートが「心に響く」と話題です。苦渋の決断を下した背景や、1000字もの投稿に込めた思いを聞きました。

 投稿したのは、京都市下京区新千本通木津屋橋下ルでたこ焼きや焼きそばを出す居酒屋「京乃雫(きょうのしずく)」を営む30代の男性です。男性は昨年10月に店を開きました。だしを利かせたたこ焼きをはじめ、こだわりのホルモン焼きやお酒などが自慢です。

 話題となったツイートは、男性が6月9日夜に投稿しました。「コロナ禍がはじまったころ『このままでは小さな飲食店はみな潰(つぶ)れる』と騒がれました」という書き出しから始まる長文です。

 「京乃雫」のある一帯は、京都水族館や京都鉄道博物館などの集客施設があり、観光客が多い地域です。昨年にはJRの新駅「梅小路京都西駅」が開業し、新しい住民が増えているエリアでもあります。

 「京乃雫」は客足を徐々に伸ばし、年明けには経営も軌道に乗りかけていました。外国人客も順調に増え、中国語のメニューでも作ろうかと考えていた矢先に襲いかかったのがコロナ禍でした。

 来店客は激減し、3月の売り上げは連日ほぼゼロだったと言います。男性は4月上旬に「普通に潰れそうです」とツイッターに書き込みました。投稿は4000リツイートされるなど話題となりました。この投稿を見た人が訪れてくれたおかげで、一時は来店客が増えたそうです。

 しかし、4月16日に全国に緊急事態宣言が発表されると、客足は一気に遠のきました。直後に男性は閉店を決意しました。

 ツイートでは、賃借している物件の契約上、店をたたもうと決意しても数カ月後にしか閉められないことを自身の決断も振り返りながらつづりました。

 「コロナ自粛でお休みしていた3~5月に『もう駄目だ~、閉めよう』と決められたお店が閉まるのは、本当にこれからなんです」

 さらに、苦境に立つ同業者の心境をおもんぱかり、こう書きました。

 「『閉めるなら早めに伝えてくれたら出来るだけ行ったのに』と思う方も多いでしょうが、最後まで黙って、急に閉店される方って、絶対に多いと思います」

 男性自身も、いろんなお店を訪ねておいしいものを食べることが好きだそうです。飲食店の店主として、また外食が好きな客の立場として、一番伝えたかったのが、次の一文でした。

 「貴方のお気に入りのお店がまだ存在するのなら、『今』行ってあげてください」

 ツイートは大きな反響を呼びました。3万5千回以上リツイートされ、4万回以上の「いいね」が付きました。「心に響きました」「一度食べに伺いたいのですが」などのリプライが寄せられました。

 さらに、同じように飲食店を営む人たちからの返信もありました。

 「読ませていただきました。涙が出ます。ウチはほそぼそとやれてますが、いつ何時こうなるかわかりません。残された時間無理をせず頑張ってください。応援しております」

 男性の店は6月28日で閉店します。男性は投稿の最後をこう結んでいます。

 「その店は貴方がいざ行こうと思ったときもう無いかもしれません。そして、今の飲食(店)はその可能性がとても高い状況です。それだけをわかってもらいたくて書きました」

 「京乃雫」の営業は午後5時~11時まで、水曜定休です。

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