在宅学習、無料アプリがあっても通信料が…コロナ禍でシングルマザーが感じる、教育格差の広がり

島田 志麻 島田 志麻

私は6歳の子どもを育てるシングルマザーです。子どもはまだ未就学児ということもあり、現在のコロナ禍に置かれても、さほど教育に対する不安は抱いていませんでした。しかし、同じシングルマザーであるA子さんにはすでに中高生の子どもがいます。彼女からの話を聞き、私が感じたコロナの影響による教育格差についてのお話をします。

A子さんはシングルマザー歴10年の頼れるママです。子どもは高校生と中学生の男の子が2人います。彼女は身体が弱いこともあり、勤務時間の短いパートをしながら、生活保護を受けています。子どもたちはそんな母親を優しくサポートしており、お金に苦労することはあっても、家族3人で明るく過ごしていました。

そんな明るい生活に、コロナの流行が少しずつ暗い影を落としはじめます。A子さんはパートの勤務がなくなり、生活保護のお金だけが一家の頼りとなってしまいました。生活はますます苦しくなっていきます。くわえて、子どもは2人とも食べ盛りの男の子。まずは食費を優先してしまうため、他の生活用品を買う余裕は徐々になくなっていきました。

高校生の長男は、アルバイトをして家計を助けたい気持ちはあるものの、緊急事態宣言や休業要請のなか高校生ができる仕事はありません。自分のスマートフォンの通信費は今までアルバイト代で賄っていましたが、そのお金もなくなってきたと言ったそうです。

高校からは民間企業が提供している「在宅学習用アプリ」を導入するように言われました。そのアプリ自体は無料で利用料はかかりませんが、動画を見て勉強する必要があり、通信料は自己負担となります。

しかし、A子さんの自宅は通信費を抑えるため、家でWi-Fiの契約はしておらず通信環境が整っていませんでした。そのため、毎日動画を見て勉強をするとなると、限られた通信容量を使用してしまい、長男が使う格安SIMカードのスマートフォンで、勉強を続けていくことは困難でした。

このままでは勉強に遅れが出てしまうと思ったA子さんは、せめて参考書を買おうと思い、長男を連れて書店に行きました。しかし高校の参考書は1冊2,000円以上するものが多かったのです。5科目を1冊ずつ買えば、それだけで1万円の出費です。その値段に、長男は参考書の購入を断りました。そのうえ、

「そのお金で弟に参考書を買うか、もっと飯を買ってくれ」

と言ったそうです。

ちなみに、A子さんの子どもは2人ともよく勉強ができます。それは民間企業が支援している塾のおかげです。生活保護を受けている家庭の子どもを中心に、無償で授業を行っている塾があり、そこで子どもたちはめきめきと学力を伸ばしていきました。

ですが現在、そのような場所はすべて閉鎖されてしまい、子どもたちの勉強をサポートしてくれる場がなくなってしまいました。

「インターネットを利用して勉強もできない、参考書も購入できない。私たちのような家庭では、勉強をする機会すら奪われてしまう」

A子さんは悔しそうに話します。

はじめは学校から支給された教科書を読んでいた子どもたちも、だんだんと飽きて、近頃は全く勉強をしなくなってしまったそうです。長男はスマホゲームのせいで通信量が減り、在宅学習用のアプリを使っての授業が受けられません。しかし、外出もできない、部活もできない、友達に会うこともできない、そんな状況下で息抜きとなっているゲームを取りあげてしまうことに、A子さんは抵抗がありました。

A子さんは

「自宅にWi-Fi環境を整えてあげられるお金があれば。参考書を買えるお金があれば。自分が働けないばかりに、子どもたちに申し訳ない」

と言います。でもそれは本当にA子さんだけの責任なのでしょうか。

今回の話を聞いて、親の収入差により生じる教育格差は、コロナの影響を受けますます広がるのではないかと危惧する気持ちが強くなりました。無料アプリの配信や給付金といった補償だけでは、子どもの学力サポートにはつながらないこともあるのです。

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