緊急事態宣言の延長を受け、国民の自粛疲れを心配する声が上がっています。中でも心配なのは、妻であり、母である一家のママ。休園・休校で子供に付きっきりの上に、家事を手伝ってくれない夫が在宅勤務を始めたとなると、増えた家事負担はすべてママにのしかかります。
「もう『女の家事』はやめなさい」の著者であり、家事研究家の佐光紀子さんは「外出自粛で一緒に過ごす時間が増えたことで、家事に対しての夫婦の価値観のズレが浮き彫りになった家庭も多いのでは?」と指摘します。「自粛生活で生活スタイルが変わっている中で、夫だけが“今までどおり”を望むのは無理がある。夫婦や家族で家事をシェアしていかないと、生活が回らなくなりますよ」。
これまでとは違う生活スタイルを余儀なくされるいま、夫婦がストレスなく生活していくには「家事シェア」が必須のよう。佐光さんに、家事シェアのポイントを聞きました。
夫の「単発家事」は妻の負担を増やすだけ
「たとえば、思い立ったときに1食だけ料理を作るのは、家事シェアではありません。毎日料理を作ることは家事ですが、作りたいときだけ料理をするのは本人の楽しみでしかない」。佐光さんはこう断言します。
「後片付けや食費のやりくり、食材の使いまわしなどを含めて食事づくりなわけです。それらをスルーして、『俺は家事をしたぞ』という顔をされると、奥さんはイライラします。単発家事は奥さんに『尻ぬぐい』という負担を増やすだけです」。
この、「尻ぬぐい」が、家事シェアのキーワードの一つなのだとか。
「料理なら、冷蔵庫や食費の管理までやってこそ、一つの家事と言えます。とはいえ妻の方も、『管理は私じゃないと…』と、尻ぬぐいを当たり前のこととして受け入れてしまっている人が少なくない。でも、それでストレスを感じるのなら、尻ぬぐいをしなくていいところまで任せてしまったほうが絶対に楽です」。
でも、お願いしたからと言って、素直に聞いてくれるでしょうか?
「自分のやりたくない家事を押し付けるのではなく、彼が『やってもいい』と思えることを担当できるように、『ゴミ出し、洗濯、夕飯のどれがいい?』など、シェアしたい家事の中から選んでもらうのはどうでしょう?」。
「そして、選んだ家事に関わることはすべて任せてしまう。夕飯なら、冷蔵庫や予算の管理、片付けまで丸ごとです。冷蔵庫の管理などは慣れるまで時間がかかりますから、買い出しの際に冷蔵庫の中の写真を撮っていくといいですよ。予算管理は、『この金額の中でやってほしい』と伝えればいいと思います」。
この機会に収入と支出の内訳を夫婦でしっかりと共有するのも一案。
「家計管理を共有すれば、管理そのものが他人事ではなくなりますから、予算内で作れる献立を夫婦で一緒に考えることもできます。そうして会話が増え、こちらの意図が伝われば、一人でがんばっている感じも減ってストレスも軽減されるのでは?」。
「ありがとう」の威力
とはいえ、夫にとっては慣れない家事への挑戦です。家事シェアで、モチベーションを維持してもらうにはどうすればよいのでしょう?
「男性陣の話を聞いていると、奥さんの役に立ちたい、喜んでほしいという人が多いのです。ですから、いきなりのダメ出しは避けたいところ。また、『気づいているよ』という意思表示のつもりで、ひとこと『ありがとう』と声をかけましょう」。
「あとは、自分のやり方を押し付けないこと、厳しすぎる目で見ないことです。旦那さんならではの発想や知恵を一緒に楽しむくらいのつもりで、柔軟な姿勢で見守れたらいいですね」。
「家事シェア最大のメリットは、家事を介して夫婦の会話が増えること」と佐光さん。
「この状況を夫婦で助け合いながら乗り越えられたら、これから先も一緒にがんばっていこうと思えるのでは?」と話します。
長期戦が予想されるウイルスとの戦い。家事をシェアして助け合えれば、夫婦の絆がより一層深まるかもしれませんね。