新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、「トイレットペーパーが手に入らなくなる」「呼吸を10秒止めてせきや息切れなどがなければ感染していない」といったデマが会員制交流サイト(SNS)などで飛び交っている。人々が深刻な状況に陥ったとき、拡散されていくデマはどのように生み出されるのか。社会心理学を専門とするサトウタツヤ立命館大教授に、背景と注意点を聞いた。
―デマが広がる背景は。
「多くの人が同じことを知りたがっている状態がある。新型コロナウイルスの場合、多くの人は『命を守るためにどうしたらいいか』『生活を維持するためにどうしたらいいか』ということを知りたいが、情報が少ないので不確かなことを本当のことだと思い込んでしまう」
―実際、記者の母や知人からもLINEを通じてデマが届いた。
「うわさやデマは曖昧さと重要さに比例して流れる。『本当だったら役に立つから』『本当だったら伝えないと』という善意が善意を呼んで広がる。同じ心理状態にある人が多いほど流れるデマは大きくなる」
―デマはどのように生まれるのか。
「まず基本となる情報が存在する。発端は悪意である場合もあるが、2人目以降は善意で広がる。相手に納得してもらおうと周辺情報が付け加えられていくうち、ある種の人たちにとって『事実っぽさ』があり、信じられる情報になる」
―デマを見抜くためのポイントは。
「『友人から回ってきました』と始まり『拡散してください』と終わる文章はデマの一つのパターン。知人から回ってくる情報だから信ぴょう性が増すが、自分に回ってくるまでに何人の『友人』を経由しているか想像してみてほしい」
―情報を共有する際に気を付けるべき点は。
「疑うことは難しいが、一度立ち止まって考えることが必要。切迫した状況ではブレーキが効きにくいが、『すぐに送りたい』と思うときほど立ち止まってほしい」
―行政やメディアはどのように情報発信すべきか。
「デマを拡散する心理の根底には、正確な情報をもらえていないのではないかという不安や不信感がある。欲しい情報を分かりやすく伝えれば、受け手は答えてもらえている安心感を得ることができる。正確な情報を分かりやすく、受け手の特性を考えて届けることが重要だ」