マスク増産のはずが...なぜ手に入らない? ネット販売に大口購入、世界規模の需要「行き渡るめど立たず」

どなどな探検隊(パートナー記事)

天草 愛理 天草 愛理

 マスクを求めて早朝からドラッグストア(DS)に並ぶ人がいるが、自分は仕事があるので並べず手に入らない―。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」のLINEに、そのような声が複数寄せられた。実際、京都市内のDSを朝訪れると、マスクを買い求める人たちが開店前から列を作っている。DSの中にはそうした状況を憂慮し、開店直後のマスク販売をやめる店舗も出てきた。安倍晋三首相が「3月には月6億枚以上の供給を確保する」と表明したにもかかわらず続く品薄状態。いったいマスクはどこへ消えたのか。

 「4月10日より開店時のマスク・ウイルス関連商材の販売を一旦、中止させて頂きます」

 大手DS「スギ薬局」の西賀茂店(京都市北区)の入り口にそんな張り紙がこのほど掲示された。今後は、混乱を避けるために販売日や販売時間などの問い合わせには答えない旨も書かれていた。

 スギ薬局広報室は「新型コロナウイルスの感染防止の観点から客の集中を避けるため。店舗によっては近隣に住宅があり、行列ができることで声やごみが問題になることもあった。人によって立場や状況は違うので、いつ売られるか分からない販売方法が一番公平と判断した」と説明する。

 新型コロナの感染拡大に加え、花粉症のシーズンということもあり、マスクの需要は高止まりしている。だが、DSではいまだに品不足が続き、消費者の不満はたまる一方だ。そもそも生産体制はどうなっているのだろうか。

 衛生用品のメーカーや輸入販売業者でつくる日本衛生材料工業連合会(東京)は「国内のメーカー各社は2月初旬から24時間稼働に切り替え、通常の約2・5倍で生産している」と話す。3月は政府発表通り、6億枚を生産したという。さらに医療用と一般家庭用のマスクは製造設備が違うため、どちらかの生産にウエートを掛けることで一方が減ることもないという。

 では、なぜマスクが足りないのか。同会は、花粉症や新型コロナの感染予防による需要拡大に加え、「インターネット販売が従来より大きく高まったことや、事業所が大口で購入して従業員に配布していることなど、いくつかの要因が複合的に結びついている」と推察する。

 流通面はどうか。DS事業者などでつくる日本チェーンドラッグストア協会によると、2~3月上旬は新型コロナの感染が拡大していた中国からの輸出が滞ったのが品不足の主因だった。3月中旬以降になると、欧州を中心に感染が広がったことでマスク需要が世界規模で増大し、入手困難に拍車をかけているという。

 同協会は「現状、マスクが行き渡るようになるめどは立っていない」としながらも「店舗には十分ではないまでも一定のペースでマスクが入荷している。できる限り、販売を続ける」と消費者に理解を求める。

 京都府健康福祉総務課は「風邪の症状や感染症の疑いがある人にマスクを使ってもらうことが重要。症状がない場合は、こまめな手洗いや『3密』(密閉・密集・密接)の回避などで冷静に対応し、買い占めなどは控えるようにお願いしたい」と呼び掛けている。

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