新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界の株価市場は下落が続き、先行きが懸念されている。そんな不安を克服する人生戦略をそれ以前から掲げているのが、レオス・キャピタルワークスの社長&最高投資責任者でファンドマネジャーの藤野英人氏。昨年発売の著書「投資家みたいに生きろ」(ダイヤモンド社)で「投資とは未来を信じること」と説いたが、同氏の言う「投資家」は「夢と目標と主体性を持った未来志向の人」を意味する。藤野氏にその発想を聞いた。
昨日使った金額を答えられるか
いかに日頃から漠然と金を使っているか。自らの消費行動に自覚的であることで生き方も変わる。
「レシートをスマホで撮ったり、家計簿アプリを使うのも一つの方法。節約で最も大事なことはコンビニに行かないこと。多くの人は習慣というか、『寂しい』という心の穴をコンビニに行くことで埋めている。家に帰る前にふらっと寄って、欲しいわけでもないのにお菓子とか買ってしまったり。自分の行動を振り返ってみることが大事です」
八ヶ岳戦法
「富士山」という1分野で頂点を極めるのではなく、「八ヶ岳」という複数の分野でそれぞれ8割の出来を目指すという戦法だ。
「八ヶ岳は富士山ほど大きくないけれども、8つの連なりによって1つの形になっている。日本一になるのはしんどくても、いくつかを組み合わせて誰もできない境地に達すること。例えば、編み物ができるトライアスロンの選手…となると極端に少なくなる。『ニッパチの法則』というのがあって、80%まで行くのに全体の20%の時間で済むが、80%から100%に行くには、残りの80%くらいの力がいる。あるレベルまで行けても、そこから名人の域に行くのはものすごく時間がかかる。なので、富士山を目指すのもいいけれど、80%できるものが複数あれば、他の人と違った境地や評価がされる。僕自身もファンドマネジャーだけど、ピアノ、将棋、社交ダンスもやっていて、各ジャンルで極めた人には及ばなくても、いろいろな『そこそこ』を組み合わせている。それも一つの選択かなと」
家電量販店パトロール
家電量販店をこまめに見て回ることで「視野が広がる」。特に就活生にお勧めだという。
「隅から隅まで回って話を聞くと、商品の変化、価格とか何が売れているかとかの知識ができる。それを1年間続けると、面接で、売れている携帯電話や音響機器などの動きが答えられる。経営者は『足元の景気』に関心を持っている社員が欲しい。実際、採用された人も結構いたので、これはお勧めです。1年くらいかけて『パトロール日記』を付けるとなおいい。さらに1年半くらい定点観測して、はやりすたりを知ったら、家電関係だけでなく、銀行、証券、金融、鉄鋼であれ、絶対欲しい人材になります」
旅先でご当地グルメを楽しむ
藤野氏は旅先の地元メシに刺激を受ける。例えば、根室の「エスカロップ」や「オリエンタルライス」が強く印象に残ったという。また、最近はまった飲料も語った
「最近感動したのは『阿波番茶』。ちょっと発酵して乳酸ぽい番茶なんですよ。徳島産ですが、京都のフランス料理店のシェフは阿波番茶を冷やして、炭酸を入れてレモン果汁を入れるというオリジナルのノンアル飲料を出していて、おいしかった。そうしたイメージは、いろんなことを体験することから生まれる」
関西のおばちゃん
「電車で席を譲ったら、関西のおばちゃんから普通に『飴ちゃん』をもらったことがあって、それいいなと思った。ほんとにポケットに飴が入っている人が多い。そんな自分なりの感謝のしるしを持っていることはすごく大事。関西のおばちゃんはコミュニケーション上手で、かつ全国で一番、オレオレ詐欺に引っかからない。『あんた誰?』って突っ込む(笑)」
以上を踏まえて見えたこと。たとえ株に関わらなくても、日々の生活で「投資家」には誰もがなりうる。コロナショックに覆われた時代を生き抜くヒントがあるかもしれない。