工場に居ついた野良猫が産んだ子猫を保護 散歩やドライブが好きな犬のような猫に育つ

渡辺 陽 渡辺 陽

木材のプレス工場に姿を現した猫は、猫好きの従業員にキャットフードをもらい、居心地のいい居場所を作ってもらった。ただ、飼える人がいなかったので、不妊手術を受けることもなく、何度か妊娠した。寛野さん夫婦は、二度目の出産をした時に産まれた黒猫を飼うことにした。

 

会社に居ついた猫が出産

群馬県に住む寛野さんは、木材のプレスカット工場に勤めていた。会社の敷地内に1匹の猫がいたので、お昼休みにキャットフードを買いにいって与えると、お腹がすいていたようでガツガツ食べた。足元に寄ってきて身体をこすりつける猫は人気者に。「甘えたいんかね」と、従業員が代わる代わる見に行った。いつの間にか猫の居場所を作ってあげる人もいて、猫は、積んである木材をキャットタワーのように渡り歩いていたという。

猫好きの人たちが可愛がっていたが、誰も飼うことができず、「どうしようか」と悩んでいた。やがて猫が出産、死んだ子猫を見せに来た。寛野さんたちは、子猫を埋葬したという。2016年夏のことだった。

2017年7月、海の日の連休前に猫は再び妊娠したようで、お腹が大きくなっていた。連休中に出産、お腹がへこんでいたので子猫を探すと5匹産まれていた。みんなで手分けして里親を探した。

会社なので猫のことを快く思わない人もいて、「保健所に連れて行け」とか「殺せ」という人もいたそうだ。

 犬派だったが、猫の魅力にはまる

寛野さんのご主人は犬派だったが、「里親を探している」と言って写真を見せると、「この子がいい」と黒猫を指さした。寛野さんは驚いて、「うちで飼ってもいいの?」と聞き直した。

「うちは共働きなので、犬を飼っても思うように散歩に行けないんです。黒猫ってかっこいいと思ったので、この子を飼うことにしたんです」と、ご主人は言う。

寛野さんは、早速、猫を飼うためにネットショップでグッズを買い集めた。

他の子猫たちの里親も決まり、その後、再び出産した時も全員里親が見つかった。2019年秋には、子猫と一緒に母猫ももらってくれる人も見つかり、寛野さんたちはほっと胸をなでおろしたという。

どこに行くのも一緒

クロッコくんは、最初は脱走したがってニャアニャア鳴いていて、人を見ると隠れてしまったが、だんだん落ち着いてきた。

いまは隣の猫、はなちゃんに恋をしていて、はなちゃんの姿を追って、家の中を歩き回り、姿が見えなくなると「ウーニャン」と鳴いている。

寛野さんは、クロッコくんを車に乗せて、ディーラーやホームセンターなど、あちらこちらに連れて行く。

「犬化現象が起きているんです。子供がいないので、子供のように一緒に出掛けます。車に乗るのも大好きで、さくらんぼ狩りにも行きました」

ディーラーさんでも人気で、クロッコくんは、自分の指定席を決めている。地元のお祭りにも参加。珍しいので、見ず知らずの人も写真を撮ってくれるという。

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