松根けんしろうくんは、瀕死の状態で遊歩道に横たわっていた。神奈川県に住む松根さんは犬好きだったが、子猫のことを放っておけず介抱し、いったん里親を探したものの、自分で飼うことにした。松根さんの愛犬は、まるで母親のように子猫を可愛がった。
瀕死の子猫
神奈川県に住む松根さんは、毎朝、茅ケ崎の海の近くを散歩する。2008年4月末、砂浜近くの遊歩道を歩いていたら、手のひらに乗るような大きさの子猫が力なく横たわっていた。遊歩道には、結構たくさんの人がいて、みんな猫に気づいていたが、「もうこの子はだめだね」と言って通り過ぎていった。
松根さんは猫を抱き上げてみたが、猫風邪をひいていて目は開かず、鼻水もすごくて、顔はぐちゃぐちゃだった。まったく動かず息も浅かったので、松根さんは「助からないかもしれない」と思ったそうだ。
助かるかどうか分からなかったが、動物病院に連れて行くと、生後2~3週間だと言われた。瀕死の子猫だが、3週間くらい入院すると息を吹き返して退院した。生命力の強さを感じさせたという。
犬派だったが猫を飼う
松根さんはもともと猫に興味がなく、どう扱っていいのかも分からず、どちらかというと苦手だった。
「主人も犬が好きで、保護した時、最初は里親をみつけてねと言われていたんです」
松根さんは、子猫が退院する前から里親を探し、友達に声をかけた。すぐに希望者が見つかったが、いざ欲しいと言われると、可愛くて手放せなくなったという。松根さんは、けんしろうという名をつけて、猫を飼うことにした。
母と子のような犬と猫
けんしろうくんが家に来た時、松根さんは犬を飼っていた。犬は、けんしろうくんのことを我が子のように可愛がった。犬のお腹を触った時に何かべたっとしたものが手のひらにくっついたので、獣医師に聞くと母乳だったという。出産経験のない犬だったが、けんしろうくんを可愛がるあまり、少しだが母乳が出たようだった。
けんしろうくんも犬のことを本当の母猫のように思っていた。もう犬は亡くなったのだが、動画を再生して犬の声がすると、姿を探すそうだ。
けんしろうくんは大人しくて、可愛い猫だった。壁や網戸で爪とぎをすることもない。手のかからない子だったので、犬派だった松根さんだが、また猫を迎えることにした。