「荒れ狂った」小学校教育を救え 学力向上で問題行動は減少?奇跡のような「陰山メソッド」

山本 智行 山本 智行

 いま最も忙しい教育者の1人かもしれない。「百マス計算」などで知られる陰山英男・陰山ラボ代表(61)は全国各地の小学校にアドバイザーとして赴き、劇的な成果を上げている。学力低下が叫ばれ、小学生の暴力行為が急増しているなか、なぜ「陰山メソッド」が効果的なのか。大阪市浪速区の取り組みをのぞいてみた。

 日本の教育現場が危ない。特に小学校は2013年ごろから荒れ始め、信じられないことに、いまや暴力行為は高校の2倍というデータも。大阪府教委の教育委員長なども務めていた陰山氏は、いじめ、不登校も急増しているというデータを示し、警鐘を鳴らす。

 「小学校はまさに荒れ狂っている状況。地獄へ向かって一直線ですよ。国、地方自治体、教師はもちろん、日本全体で解決しなければならない問題です」

 荒れる教室に比例し、当然のように国際学力テストの順位も低下。その一方で教師は疲弊し、退職者も年々増えている。

 「教師不足も深刻です。何しろ志願者そのものも減っていますからね」

 こう書いていると気持ちが落ち込むが、希望はまだ残されていた。陰山氏がアドバイザーとして招かれた小学校で「陰山メソッド」による徹底した反復練習を実践することで基礎学力が向上。それとともに学習態度、生活習慣まで改善されているというのだ。その代表例としては「飯塚の奇跡」がある。

 陰山氏がかつて炭鉱で栄えた福岡県飯塚市の教育委員会から学力向上のアドバイザーを依頼されたのは12年11月。そこから改革に取り組むと、13年4月に実施された学力調査で、それまでの全国最下位クラスから全国平均へ。その後もどんどん伸び、いまでは全国トップクラス。街の風景まで変わったという。

 「基礎学習ができるようになると、応用力や活用力も伸びるんです。いまでは子育てをするなら飯塚となり、人口も増え、市の税収もアップしました」

 では「陰山メソッド」とは一体どんなものなのか。良く知られているのは縦横各10個並んだ数字を暗算し、交差するマス目に答えを書き込む「百マス計算」、あと論語などの音読、漢字の書き取りなどがある。

 「みなさん、勉強というと難しい問題を時間掛けて解くと思いがちですが、簡単な問題を速く解く方が脳が活性化される。集中することが大切です」

 学力低下に危機感を抱いた大阪市浪速区の大国小でも陰山メソッドを昨年4月に導入。1月のある日、成果を確認する授業が公開された。この学校では毎日1時間目の授業の最初の15分を割いて、読み、書き、計算問題に取り組んだことで、応用問題にもスムーズに入っていけたという。ある教員は「教室での一体感や集中力が高まり、授業中の問題行動もなくなった」と成果を口にした。

 視察した陰山氏は納得顔。「小学1年生の間に覚える漢字は80字。ゆっくり覚えるのではなく4月に入学したら1カ月で覚えましょう」「小学校3年生では250字ですから原稿用紙の半分。これを写経よろしく毎日書けば、すぐに覚えられるし、後の授業も楽になります」とハッパをかけた。子どもたちの目の輝きが印象的だった。

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