「器用すぎる」と話題のカナダヤマアラシ リンゴの皮をむくようになったきっかけとは…

太田 浩子 太田 浩子

 「好きな人にもっと近づきたい…でも、傷つけてしまうかもしれない」という心の葛藤を、心理学では「ヤマアラシのジレンマ」というそうです。ヤマアラシは体に3万本以上の鋭いハリを持つため、ハリで相手を傷つけてしまうから近づけないという意味です。そんなヤマアラシですが、両手でリンゴを持つ写真がSNSで話題になっています。

 「おっきなリンゴをガシッとつかみ、かぶりつくのかと思ったのですが、皮をむきました。結局、全部たべるけど。上手だね、ルーリー」という「名古屋市東山動植物園」(名古屋市千種区)のツイートに、「かわいすぎかよ!」「凄いにゃ!!」「とっても器用ですね(o^-^o)」とメロメロになる人が続出しています。

 同園のツイートやブログには、木の上で手足をブラ~ンとさせて寝ている姿やトトロのようなかぎ爪で栗を持ちモグモグしている姿が投稿されています。その脱力系のかわいさから、好きすぎて「抜け針欲しい」という人まであらわれるほど。動物園の担当者さんにルーリーについて聞いてみました。

 ──器用に薄く皮をむいていますね。ルーリーはいつも皮をむいて食べるんですか?

 もともと皮は食べないんですが、写真のように皮をきれいにむく姿が見られるようになったのは実は最近なんです。というのも、以前はリンゴをカットしてあげていたんです。そうするとヤマアラシがゆっくりゆっくり食べている間に、カラスが来てまだ食べてないリンゴを食べちゃう。カラス対策で秋口からリンゴを丸ごとあげるようになったら、上手に皮をむく姿が見られるようになりました。

 ──カラスに食べられても怒らないんですか? 威嚇してハリをたてるとか。

 怒らないですね。同園ではびっくりしたときくらいしかハリを逆立てることはないですね。

 ──ヤマアラシってのんびり屋さんなんですね。ルーリーちゃんのほかにムックくんがいますが、ムックくんも皮をむいて食べるんですか?

 2頭とも皮をむきながら食べます。同園では飼育員が異動するのでいつからかはわからないのです。ムックはリンゴが好きなので皮と芯だけ残して全部食べますが、ルーリーは途中で飽きちゃうのか全部食べなかったりします。

 ──もう少しヤマアラシのことを教えてもらえますか?

 まず、ヤマアラシと聞いて一般的に頭に思い浮かべるのはタテガミヤマアラシということが多いです。タテガミヤマアラシは黒に白が入ったハリが体を覆っていて、ほかの動物園での展示も多いのですが、同園にいるのは日本ではめずらしいカナダヤマアラシです。

 カナダヤマアラシは木の上で生活するので、人の目の高さにデッキをつくって観察しやすい展示にしています。やわらかい体毛のなかにハリがあって、背中とお尻のあたりにだけハリが見えます。

 ──めずらしい動物だったんですね! 2頭の写真や動画をSNSに投稿している人が多いです。モソモソと歩く姿やゆっくりすぎる食事風景がたまりません。

 コアラやゴリラのように知名度は高くないですし、見に行こう! といわれるタイプではないですけど、毛むくじゃらの姿やエサを手で持って食べるしぐさなどに強いファンがつくタイプです。ファンの方のほうが、私たちよりもよく、かわいいしぐさをみつけてくれますね。

 ──担当飼育員さんから見たカナダヤマアラシの魅力はどんなところでしょうか?

 「顔のタブ」つまり口の上のプクッとしたところが、動物として愛らしいですね。また、木登りがうまい動物なのに、特にルーリーが降りるとき、たどたどしいのがかわいいです。

名古屋市東山動植物園 http://www.higashiyama.city.nagoya.jp/

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