十五夜ではない秋の名月…目と耳と舌で味わう十三夜

大西 昭彦 大西 昭彦

 十五夜の満月は、中秋の名月として広く知られている。しかし、秋の名月はこれだけではない。旧暦9月13日の十三夜(じゅうさんや)、旧暦10月10日の十日夜(とうかんや)も古くから名月とされてきた。いまのカレンダーでいえば、今年の十三夜は10月11日、十日夜は11月6日にあたる。

竹林に囲まれた伊勢寺で観月会

 大阪府高槻市の伊勢寺では10月11日、観月会が開かれる(要予約、定員50人)。平安時代の女流歌人・伊勢を開祖とする伊勢寺は高台に位置し、周囲を竹林にかこまれているため、月見にはかっこうの場所だ。

 観月会を主催する高槻市観光協会によれば、「地元の食材をつかった夕食のほか、今年は歴史の講演会や津軽三味線の演奏会も開かれる」という。毎年この時期に会が催され、今年で8回目を迎える。

 かつてお月見といえば、十五夜と十三夜をセットにしていたようで、十五夜だけお月見をするのは「片見月」といって縁起が悪いとされた。十三夜というのは新月から数えて13日目の夜という意味で、この日の月を十三夜月とも呼ぶ。満月からすれば8割ほどが見えている状態だ。

 別名「後の月(のちのつき)」あるいは「名残の月」。十五夜がすぎても、秋の月は日本人の気持ちをひきつけてきた。

栗の和菓子で月見、猫は月の生き物?

 十五夜の満月のころはサトイモ類の収穫と重なり「芋名月」との呼び名もあるが、十三夜のころは栗や豆の収穫期で、この日の月は「栗名月」「豆名月」とも呼ばれる。そのため、和菓子店の店頭では、栗ようかんや栗まんじゅうなどを目にすることも多い。

 京都を発祥の地とする和菓子店・虎屋(本社・東京都港区)は、毎年この時期になると栗の和菓子をそろえる。京都一条店では10月末まで、「栗粉餅(こもち)、栗鹿の子、栗蒸羊羹(むしようかん)を用意しています」と話す。十日夜にちなんだものとしては、関東の店を中心に時期限定の栗名月を販売する。栗と白あんを混ぜた生地をこしあんで包み、茶巾絞りにしたもの。「(十日夜の風習のない)関西での販売はない」そうだ。

 月の満ち欠けは約29.53日のサイクルということなので、旧暦の1カ月は現行の暦よりやや短い。新月つまり真っ暗な状態のときは太陽と地球のあいだに月が位置している。そのあと地球から見て右側から細い月が姿をあらわし、すこしずつ太っていく。やがて満月になり、また右側からじょじょにやせて、また闇夜になる。

 こうした月の変化を見て、ネコの目を連想する人がいるかもしれない。古来よりそう感じた人は多いようで、日本ではウサギと月が関連づけられるが、海外には猫を月の動物としてきた地域もある。たしかにネコの瞳孔は月の満ち欠けのように変化する。

 ちなみに何匹ものネコを飼ってきた経験からして、新月のころはネコが興奮していることが多い。闇夜に狩りをした習性だろうか。逆に、満月のころはのんびり、ぐったりしている。気のせいだろうか。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース