東京都に住む岡田さんは、実家で黒猫を飼っていたので、いつか白猫を飼いたいと思っていた。積極的に探していたわけではないが、ある日、廃墟のような建物で、偶然、白い野良猫に出会った。
望んでいた白猫との出会い
2013年5月、東京都に住む岡田さんは、いつものように出勤しようと、最寄り駅に向かっていた。駅の近くのシャッターが下りている廃墟のような建物の階段の下に座っている白猫を見かけた。どこかの家猫かもしれない。野良猫でも、コンビニや保育園が近くにあり、人通りも多い場所だったので、帰る時には絶対にいないだろう、誰かが保護するだろうと思っていた。
ところが、岡田さんが帰る時にも白猫は同じ場所にいた。触っても逃げないし、「連れて行って」と言っているようだった。ご主人にも話さないと家には一緒に帰れないので、いったん帰宅した。岡田さんは、実家で黒猫を飼っていたので、次に飼うなら白猫にしようと決めていた。いままで白猫に会ったことがなかったが、偶然出会ったのだ。
「そこに白猫がいたら連れて帰ってきて」と岡田さんがご主人に頼むと、本当に白猫と一緒に帰ってきた。家まで5分くらいの距離があるが、もともと家猫だったのか、逃げようとしなかったそうだ。
都内では珍しい回虫“マンソン裂頭条虫”
岡田さんは、白猫をチロちゃんと名付けた。
チロちゃんは、お腹が空いていたのか、ごはんをガツガツ食べた。キャットフードの袋を置いておくと、全部食べてしまうくらいの勢いだった。やせこけていたのは、お腹にマンソン裂頭条虫という都内ではあまり見かけない回虫がいたからで、あまりの珍しさに獣医師は、回虫を「できれば持ってきて」と言った。獣医師でも図鑑でしか見たことがないような回虫だったのだ。薬を飲んでもなかなか治らず、食欲はあるが太れなかったという。腕の毛もストレスではげて地肌が見えていた。チロちゃんの具合が落ち着いてから不妊手術をしたが、チロちゃんは妊娠していた。米粒くらいの赤ちゃんがお腹の中にいた。
新しい猫、おはぎちゃんとの同居
チロちゃんは、のんびりした子で、優しい性格だった。岡田さんのお母さんが亡くなった時も、ずっとそばにいてくれた。家の中を飛び回って遊ぶという感じではなく、なでてもらうのが大好き。ブラッシングをしてあげると心地よさそうにする。
チロちゃんが約7歳になった時、岡田さんは、おはぎちゃんという猫を保護した。チロちゃんのことを思ってご主人が反対したのだが、右脚を骨折していて、断脚後、野良猫として生きていけないと獣医師に言われたので、家猫にすることにしたのだ。
おはぎちゃんが来てからチロちゃんは、吐くようになった。岡田さんは、おはぎちゃんを猫好きの隣人に譲ることも考えたが、断脚したおはぎちゃんを手放す気にはなれなかった。「チロも大変だろうけど、おはぎも大変だから」など、チロちゃんをいたわる声をかけるようにすると、1カ月くらいでチロちゃんの体調は回復した。いまでは、仲良しというわけではないが、一緒に暮らせている。