「親同士が仲が悪いからといって、子どもも悪くなる必要はない」韓国の友人から学んだ思い

夜回り先生・水谷修/少数異見

水谷 修 水谷 修

 8月に入って日本政府が韓国を「ホワイト国」(輸出優遇国)から外す輸出規制強化を決め、懸念されていた日韓関係がさらに悪化している。教育家の水谷修氏は、韓国でも出版されたベストセラー著書が今年映画化されるなど深い縁があり、親友である同作の監督をはじめ現地の人と交流を深めてきた。国家間の諍(いさか)いが庶民にまで影響を及ぼしていることを危惧する同氏は、実体験をもとに両国民のより良き関係の回復に向けて思いをつづった。 

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 私は、今年5月、韓国に行ってきました。韓国でも多くの若者たちに読まれている私の本「夜回り先生」を原作とした映画「The fault is not yours」が、全州国際映画祭で上映されたためです。

 この映画の監督は、私の大切な友人であるイ・ソン・ハン氏。彼は、最愛の娘を中学校でのいじめによって亡くしています。その彼女が最後に読んでいた本が、「夜回り先生」でした。彼の娘に対する思いと哀しみ、悪化している日韓関係が、少しでも映画という文化交流を通して改善されればと、原作の著作権を渡しました。素晴らしい映画でした。原作に忠実に、日本の子どもたちと同様に、韓国で哀しみ苦しんでいる子どもたちの姿を描いてくれました。日本人が原作の映画にもかかわらず、チケットは、すべてSold out。たくさんの韓国の若者たちが来てくれました。そして、会場全体が涙に包まれました。

 上映後、舞台挨拶に立った私に、たくさんの韓国の若者たちが質問してくれました。その多くは、日本でも韓国の若者たちと同様に、いじめや虐待で苦しんでいる子どもたちが存在するのかという質問でした。わたしは、日本も韓国もまったく同じ状況だと話しました。

 今、日韓関係が、戦後最悪の状況を迎えています。「慰安婦問題」、「徴用工問題」で、最初に日韓関係に亀裂を作ったのは、間違いなく韓国政府です。日本政府は、これに対して、面と向かって受けて立ち、ある意味で報復と取られかねない対応へと動いています。そして、それが国と国との諍いの領域を越えて、両国の国民のレベルまで持ち込まれてきています。

 私は、国と国との外交問題に国民を巻き込むことはあってはならないと考えています。外交問題は、本来淡々と、両国の話し合いの場や国際機関で解決されるべきものです。しかし、現在、日韓両国の様々な国際交流の停止や、特に韓国においては、観光の制限、日本商品の不買運動など、市民レベルにまで大きな影響を与えています。本来は、このような時にこそ、民間レベルで、両国国民が文化交流やスポーツ交流、観光などを通して理解し合うことが、この問題の解決の助けになるにもかかわらず。

 私は、この原稿を書く前夜、韓国の友人に電話しました。彼の言葉に感動しました。「親同士が仲が悪いからといって、子どもも仲が悪くなる必要はないでしょう。韓国でも、多くの国民は、今回の事態を冷静に捉えています。12月の先生の映画の封切り楽しみにしています。きっと日韓関係の修復に役立ちます」

 最後に、日韓関係の悪化は、日韓両国民にとって、日韓両国にとって、何のプラスにもならない問題です。この問題で、得をするのは、誰なのでしょう。どの国なのでしょう。私たちも冷静になりましょう。

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