東日本大震災で被災し、放浪していた黒柴系雑種のチーくん 温かい家族のもとへ

渡辺 陽 渡辺 陽

獣医師によると、推定年齢9歳だった。たれ耳なので幼く見えたが、思いのほか年を取っていた。フィラリアも強陽性だったが、4年後に陰転した。

散歩をしていると、水田の水や水たまりの汚い水を飲もうとしたり、車にひかれてぺたんこになっているカエルを食べようとしたりした。

「野良犬みたいなところがありました。家では掃除機やガラケーをパタンと閉じる音も怖がって飛びあがり、震災のトラウマなのかなあと思いました。頭をなでようと思って手を挙げると身構えたので、ショックでしたね。人がいるリビングより、静かな仏間がお気に入りでした」

意外と神経質だったチーくん。無理に触ろうとするとううっと言うし、しばらくは、散歩と食事以外の時は、好きなようにさせていた。しかし、コミカルなところもあり、チーくんとの暮らしは楽しかったという。3年目からはなれてきたようで、家族が帰ってくると近寄ってくるようになった。30㎝手前までは近寄ってくるが、それ以上近づこうと思うと逃げていく。ぎゅっと抱きしめたかったができなかった。 

認知症になったチーくん

5年目、14歳くらいから老化が始まった。目や足腰の衰えに加え、心臓弁膜症の発作も起こした。チーくんは、この頃からやっと触らせてくれるようになった。

2014年に、庭に現れた子猫を保護したので、猫との共同生活が始まるが、子猫が近づくと牙をむくので、子猫が学習して近寄らなくなった。

その後、チーくんは認知症になって、一日中に吠え続けたり、ぐるぐる回って歩いたり、一方通行で歩いて物にぶつかってケガをしたりするようになった。かわいそうだと思う反面、家族みんなが慢性的な睡眠不足になり、険悪な雰囲気になったこともある。対応に困った時は家族で話し合い、夜中の世話当番を交代制にしたり、工夫をして介護に取り組んだり、できる限りチーくんの苦痛を和らげる努力をしたという。

介護生活が1年半くらい続いた頃、チーくんが弱ってきて、鳴き声も小さくなってきた。すごく甘えるようになって、抱いたら鳴きやむこともあった。次第に水分も食事も摂らなくなり、2019年2月19日、チーくんは寺澤さんの腕の中で息を引き取った。

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