SNSは使い方次第で毒にも薬にもなる。いじめ問題や時に犯罪にまで発展するケースがある一方、こんな使い方なら…会いたい人を探し出せたり、人々の心までを温かくするツールとなる。
北海道・釧路に住む、30代のさとうまみ(@satomami0)さんは今月、2人の小さな子どもを連れ遊びに出掛けた。その帰り道「天気予報では終日曇りの予報だったので油断していましたが、雨用の対策をしてくるべきだった」と後に反省した通り、ずぶ濡れになるほどの雨に降られた。そこへ車で通りかかった女性から傘を差しだされ、家路までの約10分間、雨をしのぐことができた。しかし一瞬のことで、名前や連絡先を聞いていなかったため、ツイッターで「#twitterの奇跡よ #起きないかな」とハッシュタグをつけてつぶやいた。それから間もなくして、ハッシュタグが「#twitterの奇跡よ #起こった」に変わった。このほっこりする小さな奇跡について、2人に話を聞いた。
さとうまみさんが3日につぶやいた「昨日釧路市内で雨の中ベビーカーと抱っこ紐で2人の子を連れずぶ濡れで歩く私に車を停めて傘を貸して下さった黒メガネのお姉さんへ。お名前も連絡先も聞けなかったけれど、本当に助かりました!私も人に優しくしよう、そう思わせてくださってありがとうございます」の投稿は瞬く間に拡散された。
「こんなありがとうのニュースで世の中溢れかえればいいのに」「全道が泣いた」「人の親切な行為、優しさに触れたエピソードは心が温まりますね」「こんな世の中でも優しい人はまだまだいる。とても素敵。希望の光」「いい話だなー」と多くの声が集まった。
このツイートには続きがあった。傘をさしだした本人・30代女性のくまお(@makibuhibuhi)さんから「こんにちは。私の機能していないTwitterの中の友人がリツイートしているのを見てびっくりです!!雨の中むりやり傘を持たせたの私です。家すぐなのかな?とか荷物になるかな?とかいろいろ考えて一回通りすぎてしまったんですけど、気になってむりやり渡しちゃいました。風邪はひきませんでしたか?」と連絡が届いた。
これに、さとうまみさんは「#twitterの奇跡よ #起こった」のハッシュタグとともに「なんと奇跡が起きました…twitterってすごいです。優しくしてもらった出来事を拡散してくださったみなさんの優しさのおかげで、ご本人に感謝届きました!優しい世界です」とつぶやき、SNSの拡散効果を実感した。
--くまおさんが傘を貸してくれた時、どう思われましたか
「自分が悪いのに気を遣わせてしまい申し訳ない気持ちと、見返りを求めずに人に優しくできる人のあたたかさに感動する気持ちが半々といった感じです」
--ツイッターで傘を借りたお礼を投稿していました
「連絡先も何も聞けなかったので、万が一ご本人にお礼の気持ちが届いたら…と思いつつ、まさか届くとは思っていませんでした」
--4日にくまおさんが名乗り出てくれましたね
「こんなことが本当に起こるんだとただただびっくりしました。(夫に)ツイートした後にこんなことがあったんだと話したら、RTしてくれました(笑)くまおさんのリプライを先に見つけたのは夫でした」
傘を貸した30代女性のくまお(@makibuhibuhi)さんにも話を聞いた。
--ずぶ濡れの親子を、どういう状況で発見しましたか
「この日は予報にはない雨でした。 私が車でショッピングモールを出て自宅に帰ろうとしていたところ、同じ方向の歩道にベビーカーとお母さんがチラッと見えたんで。草木があったのでよく見えなかったんです。そして、少し過ぎて車が信号で停まったときによく見てみると、抱っこ紐の中に赤ちゃんもいるし、お母さんがずぶ濡れだったんです。ですがすでに右折レーンに入っていたためすぐに戻ることはできなかったのです。信号が青になり一度右折をし、Uターンをして、親子の所で車を停めました」
--わざわざ引き返してきたのはなぜ
「抱っこ+ベビーカーでしたので、荷物になるかな?迷惑かな?とまず思いました。 でも、自分その立場だったら傘欲しいなと。 家があと数メートルでも少しでも雨がしのげたらいいなと思いました。」
--さとうまみさんはツイッターで傘を借りた人を探していました
「私はTwitterをほぼ使っていません。ですが、少ないフォロワーの中の友人がたまたまリツイートしているのを見かけました」
◇ ◇
さとうまみさんは「地元に戻って仕事がしたい」という夫とともに昨年埼玉から釧路に引っ越してきた。そして新しい土地で人の優しさに触れた。くまおさんに近々直接会って借りた傘を返すという。今回の出来事を振り返って「SNSは良い面も悪い面もどうしてもあるとは思いますが、こうして奇跡のような再会につながるなんて、SNSがある時代に生まれてよかったなと思いました」と話した。