伊豆で約600億円分の覚醒剤押収…密輸手口の「瀬取り」とは

小川 泰平 小川 泰平
1トン(末端価格600億円分)の覚醒剤を積んでいた船(小川泰平氏提供)
1トン(末端価格600億円分)の覚醒剤を積んでいた船(小川泰平氏提供)

静岡県南伊豆町の海岸で密輸されたとみられる覚醒剤約1トンが押収された事件を受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は8日、デイリースポーツの取材に対し、海上で積み荷を受け渡す「瀬取り」という密輸の手口を解説した。

 今月3日、南伊豆町の海岸で覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで、中国籍の男7人が逮捕された。男たちは静岡県の海岸と八丈島(東京都)を往復し、伊豆諸島や八丈島の近海で別の船と接触。海上で「瀬取り」と呼ばれる手法によって積み荷の受け渡しをしたとみられることが報じられた。

 警視庁などによると、全長約10メートルの船には約2キロの覚醒剤が入った袋が500袋ほど積まれていたという。逮捕された男らは積み荷を降ろす役や、海岸で船を待ち受ける役などに分担していたとみられる。

 この「瀬取り」について、小川氏は「洋上において船から船へ船荷を積み替えることを言う。一般的には親船から小船へ移動の形で行われます。過去には、中国と日本の漁船とみられる船2隻が接触し、海上で受け渡しをする方法(瀬取り)で取引された例は多数ある」と説明した。

 さらに、同氏は「運搬船と引取船がGPSを使い、やりとりする手法もある。運搬船から海上に浮くように梱包した数百キロの覚醒剤を海に投下し、時間差で引取船が回収し、無人の小さな港や、海岸に陸揚げする」と、これまであった事例を具体的に挙げた。

 海上でプカプカと浮かぶ“覚醒剤パッケージ”の群れを、遅れて登場した別の船が“漁”をするかのように拾い集めるという、一般的な生活の中ではなかなか想像できない犯罪が行われているのだ。密輸グループからすれば、陸路や空路等よりも“成功”する可能性が高いとみているということになる。

 今回押収された覚せい剤は1トン(1000キロ)だったが、注目される末端価格について、小川氏は「約600億円になるでしょう」と指摘した。同氏は「元売りからの仕入れ価格でも、10億円は下らない。また、この量からすると、過去に同じルート手法で、100キロ単位で成功していると思われます」と推測した。

 過去、今回と同じ海域であった覚醒剤の密輸では、香港から運ばれたとの情報もあり、警視庁などは香港当局とも連携しながら、密輸ルートの解明を進めている。

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