大麻合法論に異論あり 乱用で精神障害も

夜回り先生・水谷修/少数異見

水谷 修 水谷 修
田口淳之介被告と小嶺麗奈被告
田口淳之介被告と小嶺麗奈被告

  大麻の使用、所持による逮捕が続いています。2014年秋に、薬事法の改正によって、当時広く密輸、密売されていた危険ドラッグに対する取り締まりが厳しくなり、ほぼ流通が押さえられてから、国内で密売されているドラッグは、覚せい剤、コカイン、大麻の三点となり、中でも大麻がその乱用者を急増させています。

 これには、理由があります。あらゆるドラッグの中で、日本国内で簡単に製造できるのは、大麻だけだからです。北海道や一部地域では、自然に自生していますし、種子さえ手に入れれば、ある程度の知識があれば、容易に大量に栽培することもできます。暴力団による大量栽培、一般の人たちによる栽培が行われ、事件化しています。そして、その乱用は広がり、芸能人や官僚、一般市民、高校生、中学生、小学生の逮捕者も出ています。

 この大麻について、オランダやカナダ、アメリカの一部の州が合法化していることから、日本でも認めるべきだと主張する人たちがいます。大麻合法論者です。これは間違いです。他の国で大麻を合法化したのは、それらの国でのヘロインやコカインなどのヘビードラッグの乱用が広がり、そのようなヘビードラッグで壊れていく国民を少しでも少なくするためには、ライトドラッグである大麻を認めるしかないという事情があります。

 ドラッグは各国のマフィアなどの暴力組織の主要な資金源であり、それを押さえ込みたいという理由もあります。日本は、覚せい剤やコカインなどの乱用は、広がってきていますが、未だ関係機関の徹底した取り締まりである程度のところで押さえ切れています。

 また、大麻は、他のドラッグに比べ、依存性は低く、たばこのように乱用しても社会に対する脅威とはならないという意見もあります。しかし、法によって禁止されている大麻を何年も乱用して逮捕される例を見ても、その考え方には問題があります。忘れてはいけないことですが、当然、今日本で流通している大麻の大半は、暴力団による密輸、栽培されたもので、彼らの資金源になっています。

 大麻は、それを使用すると、脳に作用し、幻覚や陶酔感、多幸感をもたらします。しかし、それと同時に脳に報酬回路を作り、その作用が切れたときに、脱力感や無気力な状態を作ります。私は、大麻の乱用によって精神障害を一生抱えることになった若者たちをたくさん見てきました。こんなものがなくても、もっと素晴らしい幸せは来るのに。最後に忘れてはいけないことがあります。ドラッグは、病んでいる社会でしか広まりません。みんなが特に若い人たちが、明日を夢見る社会には、ドラッグは無用なのです。大麻の合法化より、まずは私たちの社会を変えるべきなのです。

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