関西で唯一 究極の牛乳「特別牛乳」に込める京都の酪農家の思い

広畑 千春 広畑 千春

 牧場の跡継ぎとして育てられた徹さんは高校から酪農の道へ進み、酪農大国・米国のネブラスカ州にも留学しました。ですが、帰国後に待っていたのは生産調整や乳製品自由化の嵐。価格も低迷する中、原点に立ち返り「自分たちで良いものを作り届けたい」と特別牛乳に挑みました。

 最初はいばらの道でした。借金して敷地内に処理施設を作り、衛生管理をし、全く素人だった営業や販路の開拓、宅配まで手掛けなければなりません。牛乳は「価格の優等生」だった時代、900ミリリットルで700円するクローバー牧場の特別牛乳は、百貨店でも「なんでこんなに高いねん」とたびたび苦情を言われたといいます。

 それでも、徹さんはあきらめませんでした。ストレスは乳質を下げるため牛がお腹を空かせないよう、1頭ずつ調子を見ながら1日6回、厳選した3種類の牧草と野菜の飼料を与えます。水はいつでも飲めるようにし、暑いときは扇風機とミストを使って冷やします。首を振る、腰を下ろす…。「毎日見てるんで、体調が悪いのも一目で分かる」と徹さん。「世話はしんどいけど、牛が元気で良い乳を出してくれて、お客さんが飲んで喜んでくれたら、こんなにうれしいことはない」と微笑みます。雅世さんも営業・広報担当として特別牛乳のおいしさを伝え続け、京都市内のホテルやレストランのほか全国から注文が寄せられるようになりました。夏場には生産が追い付かないこともあるそうです。

 後継者はまだいません。いつか「やりたい」という若者が現れることを願いつつ、徹さんと雅世さんは牛乳を作り続けます。

■京都の特別牛乳(900ミリリットル810円、500ミリリットル520円)のほか、ヨーグルト(300ミリリットル350円)やアイス(ミルク350円、チョコ、いちご各450円)。通信販売もできる。https://www.cloverfarm.or.jp/index.htm

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