近畿大学薬学部(東大阪市)がこのほど、育毛剤や化粧品を製造・販売する加美乃素本舗(神戸市)と共同で「近大マグロ」のコラーゲンを配合した「ルイキャラット美容液」を開発した。肌の乾燥やしわに悩む人から注目されると同時に、本来「食べる」ためのマグロから取り出した成分を「肌に塗る」という意外性も話題。徐々に売り上げを伸ばしている。
開発のきっかけは近大マグロの料理店「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」で廃棄されていた骨や皮を有効利用したいという声だった。皮を使った財布、骨のエキスを使ったカレーパンやインスタントラーメンなど、ユニークな商品が次々と生まれているが、薬学部医療薬学科の多賀淳准教授の研究室では独自の手法で通常の1型コラーゲンより高保湿の「フルレングスコラーゲン」の抽出に成功。1尾(約40キロ)から約100グラムしか得られないという貴重な成分だ。
しかし商品開発に向けては、魚特有の生臭さを完全に消すことが重要な課題。そのため脂を丁寧に取り除く必要があった。同准教授はこれまでスッポンやブリからもコラーゲンを抽出してきたが「近大マグロは特に脂が多く、今回が最も手ごわかった」と振り返る。
マグロを機械で処理する前に研究室で冷凍の皮を細かく切り出す必要があり、その際も硬さや臭いが学生たちを苦労させたほど。そもそも完全養殖のため安全性は確保されていたが、人体に影響する有機溶媒を使わずに脂を除去することにも成功し、さらに安心の品質を保証している。
新しいスキンケア商品に最適な成分を探していた加美乃素本舗は、そんな品質の高さに注目。同社の研究開発に薬学部卒業生が携わっていたことも今回の産学連携につながった。同社では、このフルレングスコラーゲンにヒアルロン酸やヒト型セラミドを配合。これにより、翌朝まで潤いを実感できるほど濃厚であると同時に、伸びの良いジェル状で肌になじませやすい商品に仕上がった。
商品名とパッケージデザインにも学生のアイデアが生かされている。ダイヤモンドの模様をあしらったボトルには、近大のイメージカラーも取り入れながら高級感を持たせた。同社マーケティング本部部長の齊藤幹雄さんは「学生さんから新鮮な発想を得ることができ、今後の商品開発をしていく上でも非常にプラスになりました」と手ごたえを明かす。
「近大マグロ」から生まれた異色のスキンケア商品「ルイキャラット美容液」は30グラム、1万円(税別)で販売。使用目安は約2カ月分となっており、加美乃素本舗オンラインショップで購入できる。