【プロ格闘ゲーマーの肖像4】世界のカリスマ梅原大吾「1/60秒の世界」に生きる

北村 泰介 北村 泰介

 注目が高まる「プローゲーマー」だが、その第1号誕生は2010年のこと。日本初のプロ格闘ゲーマー・梅原大吾、36歳。15歳で日本を制し、17歳で世界王者に。今も格闘ゲーム界のカリスマとして世界に君臨する。

 世界最大の格闘ゲーム大会「EVO」で03~04年、09~10年と連覇。04年の逆転劇は米大手ゲームサイト「Kotaku.com」の「プロゲーム史上最も記憶に残る名場面」第1位に選ばれた。16年にはESPN.comが「格闘ゲーム界のマイケル・ジョーダン」と称えた。日本でも梅原の青年期を描いたコミック、著書が出版され、テレビで特集が組まれるなど、業界の枠を超えた立志伝中の人物になっている。

 輝かしいキャリアとは対照的に本人は自然体を貫く。3月初旬に行われたゲーマー同士の結婚披露パーティーでのこと。Tシャツ姿の梅原は壇上で挨拶した。「先の見えない仕事で不安もあると思いますが、そういう業界の中で結婚して僕らも希望が持てると思います」。かつてゲームに没頭する人間に対する世間の偏見と闘った先駆者ならではの思いが行間に刻まれていた。

 「1/60秒の世界」に生きる。レバーの軸を薬指と小指で挟み、玉の部分を左からかぶせるスタイルは「ウメハラ持ち」と呼ばれ、一瞬のロスを回避する。動体視力と反射神経、駆け引き…。紛れもないアスリートだ。

 公開中のドキュメンタリー映画「リビング・ザ・ゲーム」で描かれた、15年カプコンカップ(米国)での発言がプロとしての矜持を物語った。「賞金が高いから頑張るというのがイヤ。踊らされてる感じがするから」。梅原は準優勝賞金6万ドル(約720万円)を奨学金としてニューヨーク大に全額寄付した。

 後進を意識する年代になった。「この業界でうまくやりたいと思っている人たちのサポートをするのも自分の仕事」。ゲームと真摯に向き合う。「特別なものだという意識がありますから。ちょっとやそっとの逆境では投げない、心構えというか気概はあります」。天職かと問うと「そうですね」と答えた。

 「人生はゲーム」というヒット曲のフレーズがあったが、“世界のウメハラ”にとって「ゲームは人生」なのである。

 ◆梅原大吾(うめはら・だいご)1981年、青森県生まれ。小学2年で東京に転居。10代で世界に羽ばたき、海外では「ザ・ビースト」と称される。雀士や介護士も経験したが復帰。10年に「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネスブック認定されたのに続き、16年には新たに2つの世界記録登録。著書に「勝ち続ける意志力」など。スポンサーはTwitch(初のグローバルアンバサダー)、レッドブル、HyperX、Cygames。

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