開店から半世紀…1串50円から神戸のホルモン店が地域のコミュニティに

北村 泰介 北村 泰介
「中畑商店」を切り盛りして51年になる中畑安弘さん(左)と妻・勝代さん=神戸市内
「中畑商店」を切り盛りして51年になる中畑安弘さん(左)と妻・勝代さん=神戸市内

 平成が終わろうとする今、“ディープな昭和の香り”を残して同40年代から営業を続ける店は少なくなっている。そんな中、当時は生まれていないアラフォー世代などを含む地元民や、SNSで知った人たちが全国から訪れる“知られざる名店”もある。神戸市のホルモン焼き店「中畑商店」に足を運んだ。

 JR神戸駅から西へ徒歩約10分。最盛期は約100軒あった稲荷市場の一角に「中畑商店」はある。市場は再開発で解体され、跡地はマンションや駐車場などに変わりつつある中、踏ん張っている。

 店を切り盛りする中畑安弘さん(77)と2歳下の妻・勝代さんは、香川県・小豆島の出身。大阪に出た後、20代半ばの1968(昭和43)年6月に稲荷市場で店を開いた。

 営業は朝9時半から夜7時。ハツ、アバラ、レバーは1串100円だが、名物のバサ(牛の肺)は50円。安弘さんは「肉はあるんやけど、ホルモンは品物が少なくなってね。今はホルモンが人気になって、他の居酒屋さんとかで注文が増えとんちゃうかな。(仕入れ)値段も上がってる」と時代の移り変わりに直面しながらも、この値段を守っている。

 造船所で栄えた同エリアも、92年に神戸駅の南側に複合商業施設などを擁する「ハーバーランド」の誕生によって「人の流れが変わった」と安弘さんは指摘。それでも、常連客の胃袋は離さなかった。勝代さんは「今も夜勤明けの方が寝る前に飲んで帰られます」。安弘さんは「前は地元の人だけやったけど、最近は、インターネットいうんかな、あれを見て、土日とかに東京など遠くから若い人も来られます」。店内には「お客さんに連れて来られた」というイチロー氏のサインもさりげなく飾られていた。

 会社員の三宗匠さん(37)は「20歳から17年余り通っています」という常連。奥さんと幼い娘さんと共に来店し、「下町っぽいお店で、どこか品がある。どんなに忙しくても丁寧に接してくださいます」と夫妻の人柄を語った。2003年から稲荷市場に住み、店を構え、イベントを企画。自身の結婚式を市場で行い、今も地元に住む三宗さん。「隣り合った客同士、仕事や名前を聞くことなく語り合える場」。コミュニティとしての店が地域に根を下ろしている。

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