マグロの次は遭難者探索だ 近大と丸仁がQRコード付き登山ウェア開発

黒川 裕生 黒川 裕生
レーザーで光るQRコード付きの登山ウェア(近畿大学提供)
レーザーで光るQRコード付きの登山ウェア(近畿大学提供)

 山でのスムーズな遭難者救助につなげようと、近畿大学(東大阪市)と福井県の反射素材メーカー「丸仁」が、QRコード付き反射材を搭載した登山者用ウェアを開発、4月から販売を始めた。遭難事故が発生した際には、特殊なドローンからレーザーを投射することで遭難者の位置を探索しやすくなる。またQRコードには登山者があらかじめ名前や性別などの個人情報を登録しているため、個人の識別も可能になるという。

 同大理工学部の前田佳伸教授(専攻:光エレクトロニクス)らが、丸仁と共同開発。ちなみに同社は反射光が虹色に光る「オーロラカラーリフレクター」を自社開発するなど、アパレル向けのやわらかい再帰性反射材の開発を得意とする会社で、同社の公式サイトなどによると、アテネ五輪の日本選手ユニフォームにも採用されたことがあるという。

 一方の前田教授らは2018年4月から、反射材を付けたマグロなどの海洋生物に人工衛星からレーザーを照射することで生態解明に取り組む「宇宙マグロプロジェクト」を始動。この手法が山岳救助にも応用できることに気付き、7月からはレーザーを搭載した特殊な小型ドローンを使用する山岳遭難者探索システムの開発にも着手した。

 ウェアはナイロン製の薄手のパーカー。腹、背中、右腕部分に大きくQRコードが組み込まれている。前田教授によると、今年2月の実証実験では、20メートルほどの高さから遭難者を認識できたという。前田教授は「木が生い茂るなどして空が全く見えない場所では難しいかもしれないが、50メートルくらいの高さからでも検知できるはず」と話す。また認識率は夜間の方が上がるという。

 警察庁の統計によると、2017年の国内の山岳遭難者数は3111人。統計の残る1961年以降で最多だったという。前田教授は「山岳警備隊との連携など、仕組みづくりはまだまだこれから」としながらも、「このウェアを着用していれば、万一の時に助かる可能性が高まる。どんどん普及してほしい」と期待している。

 1万8000円(税別)、完全受注販売。M、L、XLの3サイズで、色はグリーンとブラック。初回生産は100着を予定。

 丸仁 http://marujin-lf.jp/

 ライトフォースストア(楽天店) https://www.rakuten.co.jp/marujin/

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