-おいしさにもこだわって、表現しているのですね。
「“イメージは再現しつつフレンチらしく、かつ美味しい料理を”と、レストランのベテランシェフ、島野篤が試作を繰り返してメニューをつくりました。彼は銀座のフレンチの名店『コックドール』などで修業を積んできた、この道26年のベテランです」
-メニューひとつひとつに並々ならぬこだわりを感じます。『虐殺器官ピザ』『バスカヴィル家の沼地』など…
「メニューの説明文は編集部一同の労作で、読みごたえがあると好評です。でも、中には編集部以上の深読みなさるお客様もいますよ」
-というと?
「たとえば、ジョージ・オーウェルの近未来のディストピア小説『一九八四年』をモチーフにした『オードブル1984』のメニューです。小説の主人公の仕事は歴史記録の改ざんなのですが、メニューの内容が『3種類のオードブルとチーズの盛り合わせ。その日ごとに内容が変わります』となっているため、『小説にあわせて、メニューも日々書き換える設定にしたのか…』と推察される方がいました。こちらは単に、日替わりでその時々の美味しいものを出すつもりだったんですけど。でも嬉しい誤解ですね」
-物語の世界に入り込んだように感じてくださっているということですものね。
「ええ、ぜひ深読みを楽しんでくれたらと思います」
-最後に今後の展望を教えてください。
「前述の『クリスティ』で以前好評だった、エルキュール・ポアロの代表作の一つ『オリエント急行』をモチーフにしたディナーを復活させる予定です。前菜は雪の中で立ち往生する急行列車を表現。メーンの肉料理はもちろん殺人現場をイメージし、牛肉に赤ワインソース、そしてポテトフライでナイフを形どりました。デザートに出てくるポアロご自慢の“灰色の脳細胞”を想起させるゴマのムースまで、ぜひ味わってください」
※本文内の表記はすべて税抜価格
◆「BOOKレストラン」(ラ・リヴィエール)月~金曜日、17~22時(L.O.21時)/東京都千代田区神田多町2-2第三ハヤカワビル/TEL03(3258)1800