改正出入国管理法で懸念される外国人犯罪~暗躍するブローカーの実態とは

小川 泰平 小川 泰平
コンビニエンスストアで接客する外国人店員。勤勉で日本社会に溶け込む人たちも多い(写真はイメージ)
コンビニエンスストアで接客する外国人店員。勤勉で日本社会に溶け込む人たちも多い(写真はイメージ)

 彼らは当時、300万円くらいを中国のブローカーに払っていた。日本で1年働くと福建省で家が建つと言われて。だが、肉体労働をしたからといって家は建たない。そこに目を付けたのが中国の犯罪組織「蛇頭」だ。最初はカード詐欺や泥棒が逃げる時の運転手など簡単なことをやらせ、やがて犯罪ランクが上がっていく。何年か日本で稼いで帰国した者は本当に家を建てた者もいる。もともとは留学生だったり、コンテナで来た者だった。

 命がけで船に乗った時代と違って、今は飛行機で来る。サッカーの日韓W杯が開催された2002年には日本への入国審査が緩和されて外国人が増えたが、この年は被害届の数を示す「刑法犯認知件数」が285万3739件もあった。日本人も含む数字だが、昨年は91万5042件だから約3倍である。W杯時に来日し、そのまま居ついて逮捕された者は「日本はいいところだ。道路に金庫が置いている」と言った。“道路の金庫”とは自動販売機のこと。犯罪者にとって日本ほどいい国はないという。

 法改正に話を戻すと、「特定技能1号」として「生活に支障のない会話ができる、一定の知識や技能を持っている者」が対象になっている。日本で法整備をきちんとやって、審査を厳正にするといっても、多岐にわたる書類が必要になることによって喜ぶのはブローカーである。

 つまり、来日時に高い金をブローカーに払い、語学ができると証明できる学歴や資格、知識や技能を要する職歴、親の年収や銀行の預金残高など、偽造または虚偽の書類を作ってもらうのだ。それが本物かどうかはなかなか見破られない。

 偽装留学生にもビザは発給されている。かつて多かった中国や韓国ではない、新興国の留学生が今は急増しており、ブローカーへの手数料や日本語学校の学費などで大金を払っているため、アルバイトだけでは返せず、同胞の犯罪組織に入る者がいる。薬物事案などで、ある特定の国の逮捕者が増えている。

 「外国人は日本人がやりたがらない仕事をやってくれる」「雇用が増えるからいい」という建前で法改正がなされたわけだが、「犯罪」という観点において、そこには大きな問題点が潜んでいることを認識してほしい。(犯罪ジャーナリスト)

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