威力偵察!ときには飛び込み営業だ

元自衛官が解説・営業に使える戦闘技術

平藤 清刀 平藤 清刀
飛び込み営業(威力偵察)は、自分も傷を負うリスクを覚悟しなければなりません
飛び込み営業(威力偵察)は、自分も傷を負うリスクを覚悟しなければなりません

 新規のクライアントを開拓してパートナーになってもらい、いかにして自社(自分)の利益に結び付けるか-。営業をかけて仕事へ結びつける流れは、自衛隊の戦闘部隊が敵部隊を攻撃する行動パターンと一致する部分が驚くほど多いです。自衛隊の普通科部隊(歩兵部隊)が行う基本的な攻撃行動の訓練パターンを例にとりながら、営業活動にどう応用できるかの一例を解説していきます。ビジネスの多くは見込み客の探索から始まりますが、どのように情報収集をすすめれば良いでしょうか…。

  ◇  ◇

 偵察とは、基本的に「どこにいるか分からない敵の所在を探り、情報を収集すること」が目的です。その段階からさらに進んで、すでに敵の居場所を掴みました。次に知りたくなるのが「あいつら、どんな武器をもっている?」とか「兵力はどれくらいかな?」という情報です。それを探るために、状況が許せば「威力偵察」をやります。ひらたくいえば、ちょっかいをかけてみて、反撃してくる様子から敵の戦力を推し量ろうとする情報収集法です。たとえば、こちらに戦車があれば、何発か撃ってみます。敵にも戦車があれば、必ず戦車で撃ち返してきます。なぜなら、戦車をやっつけるためには、戦車が最も有効だからです。もし対戦車ミサイルとかロケットランチャーを撃ち返して来たら「敵陣地に戦車はなさそうだな」という判断になります。このようにして、敵に武器の使用を強いることで、どんな武器をもっているかを、あるていど探れるわけです。

 ですから威力偵察では、決戦的な戦闘は行ないません。本格的に攻めるのは、得られた情報を分析して、こちらの体勢を充分に整えてからです。

 さて、将来の商売相手になってくれそうな見込み客がどこにいるのかを探ることが、情報収集をやる最大の目的です。そのためには、まず何を売りたいのかという「目標」をしっかり定めることが大事です。極端な話、親元を離れて独り暮らしをしている学生に子育て用品を売り込んだって、売れるわけがありませんよね。

 自社の商品やサービスを売りたい相手は何を欲しがっていて、どんな付加価値をつけたら買ってくれるのか。企業を相手にするなら、情報は比較的簡単に入手できるはず。ネット検索すれば会社情報くらいは出ているはずだし、ホームページを開設している会社なら「どうぞ営業に来てください」と向こうから手招きされているようなものです。

 見込み客を探索する情報収集が通常の偵察とするならば、威力偵察は飛び込み営業に相当します。いきなりアポなしで訪問する行為は、いささか迷惑で失礼には違いないでしょう。塩を撒いて追い返されるかもしれないし、場合によっては会社にクレームが入ることを覚悟のうえでの行動です。悪くすれば不法侵入で警察を呼ばれるかもしれないリスクも負っています。それでも、相手の様子から「話を聞いてくれそうだ」「絶対ムリ」くらいの感触はつかめないでしょうか。

 「営業に来るんやったらアポぐらい取らんかい!」と怒られても、アポをとれば話を聞いてくれると都合よく解釈すればいいし、「今は要らん」と言われたら、いつかは要るときが来るということです。

 いずれの場合でも、次の行動を起こす際の有力な情報になります。怒られたり怒鳴られたりして心が折れていたら、飛び込み営業なんかできません。威力偵察では、味方に多少の被害が出ることは、あらかじめ織り込み済みです。

 本来ならば、前もって相手に関するデータを集めてからアポを取って訪問(偵察)するのがマナーです。飛び込み営業(威力偵察)は、自分も傷を負うリスクを覚悟しなければなりません。

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