連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK総合)第5週では「狂騒で、東京」と題し、東京・本郷の下宿部屋での珠(石橋静河)と保(金子大地)の暮らしが描かれる。10月26日に放送された第21回では、珠が通い詰める書店「ぶくぶく堂」で、文士たちとの思いがけない出会いがあった。
珠は、「ぶくぶく堂」に来店していた作家・秋山格之介(高良健吾)と入り口ですれ違う。店主の本田(川島潤哉)は「本物には伝わるんだよ。この店の本気が」と誇らしげだ。秋山は、その佇まいと『羅城門』『蜘蛛の巣』などの作品名からして、芥川龍之介をモチーフにしているとわかる。
さらに、珠が女学生の頃から愛読していた『イワンの馬鹿』の翻訳を手がけ、珠の“推し翻訳家”となっていた小山牛丸(イッセー尾形)にも遭遇する。登場するなり絶大なインパクトを与えた小山のキャラクターと、演じるイッセー尾形の魅力について、制作統括の村山峻平さんが語った。
「何が正しいのかわからない」大正時代のエネルギーを表現
小山に特定のモデルはおらず、ドラマオリジナルのキャラクターだと村山さんは語る。
「珠が愛読していた『イワンの馬鹿』の翻訳を手掛けた小山牛丸とは、一体どんな文豪なのか。たぶん視聴者の皆さん、そして珠にとっても『想像と全然違った』のではないでしょうか。著名な作家であり、博識な人物ではあるんだけれども、『正しさ』みたいなものをあまり強調せずに、ユニークさのほうを押し出して作ったキャラクターです」
牛丸をはじめ、本作に登場する文豪たちの人物造形を通じて、大正から昭和にかけての文学界の空気を出したかったのだという。
「第5週では当時の文学界、そして世の中に渦巻いていたエネルギーを珠が目の当たりにする、その入り口を作りたいと思いました。大正から昭和にかけての、時代が大きく動こうとしていた頃、まだ何が正しいのか、正しくないのかわからない中で、みんな一生懸命に生きていた。そのリアルタイム感を描きたいと考えました。そんな時代の空気を象徴する牛丸という人物が発する言葉も、すべて正しいものなのか、『宝物』なのかどうか。その『わからなさ』が面白いのではないかな、と」
イッセー尾形演じる小山牛丸が繰り出すジャズのフレーズのような言葉
演じるイッセー尾形の魅力についても話す。
「僕はイッセー尾形さんの一人芝居が好きで、たくさん拝見してきましたが、『ちょっとした違和感』を作ってくださる俳優さんです。『ブラッサム』という物語のストーリーを理解しつつ、ちょっとしたリズムの乱れというか、いい意味での『予定調和じゃない』お芝居を出してくださる。お芝居の上手な俳優さんが普通に『予定調和じゃない』感じを出すと、逆に場に馴染んでしまったりするのですが、イッセーさんはそこでしか出てこない、ジャズのフレーズのような台詞を繰り出してくれます。そんなところにも、大正時代の『動いていくリアルタイム感』が出たのではないかなと思っています」
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今後も『ブラッサム』では、大正から昭和にかけて活躍した作家をモチーフとした人物が続々と登場し、珠の作家人生に影響を与えていく。