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熊本地震から1か月超、倒壊したビルに取り残された猫を救出 “猫版DMAT”で連携プレー

岡部 充代 岡部 充代

 最大震度7を記録した「令和8年熊本地震」から1か月以上が経過した9月10日、1匹の猫が家族との再会を果たしました。名前はシーソー。八代市内で倒壊したビルに猫が取り残されているようだ、との情報を受け取った「一般社団法人 V-CATS JAPAN」のメンバーによって保護された猫です。

 中心となって捜索したのは兵庫県尼崎市を拠点に活動している動物愛護団体「つかねこ」代表・安部壮剛(もりまさ)氏。V-CATS JAPANの共同代表でもある安部氏は地震発生翌日に熊本入り。迷子猫の捜索依頼を受け、保護・一時預かり・家族の元へ返還というボランティア活動を続けています。

「V-CATS JAPANは民間の愛護団体と獣医師、学術機関が連携して活動する、いわば“猫版DMAT”のような組織。大規模災害が起きたときいち早く現場に入り、医療や捜索を組織的に行う体制を整えています。あの日は、神奈川の麻布大学で災害協定についての意見交換を行っていました。「震度7の地震が起きたら、V-CATSは100%出動する」――そう話していた15分後、本当に熊本で震度7の地震が発生したんです。すぐに緊急の災害対策会議に切り替えて、資金や物資の調達、動員などについて話し合いました」(安部氏)

 V-CATS JAPANが捜索依頼を受けた猫の保護・帰還率は約80%。かなり高い数字ですが、シーソーの場合、他の迷子猫とは事情が違いました。飼い主を探すところから始めなければならなかったからです。

「熊本に入って間もなく、SNSに投稿された1枚の写真を見た複数の方から、『倒壊したビルの3階の窓辺に猫が写っている。助けてあげてほしい』と連絡が入りました。ビルの登記情報を調べたけれど記載された電話番号は使われておらず、10年前に売買した仲介業者の情報からビルの所有者にたどり着きました。その方が猫の飼い主だったのです」(安部氏)

被災地でのノウハウ生かしペット捜索

 1階の店舗は地震で押しつぶされましたが、住居だった2、3階はかろうじて残り、その3階に猫が取り残されていました。

「写真に写っていたキジトラ1匹だけかと思ったら、実は2匹いるとご家族から…」

 そのもう1匹がシーソーでした。危険な倒壊現場に立ち入るのは簡単ではありません。安部氏は関係各所と交渉を重ね、「緊急災害対策本部」のレスキューチームに同行する形でビルに入ることができました。

「建物の構造や間取りを把握した上で監視カメラを設置。当時の熊本は40度近い猛暑でしたから、まずは水とフードを置いて決まった場所に食べに来るよう誘導するプランを立てました。それがうまく行き、いよいよ明日、捕獲器を設置しようと考えていた日に不測の事態が起こって、猫たちはどこか奥深くへ逃げ込んでしまったんです」(安部氏)

 

 3階での捕獲計画は白紙となり、押し潰された1階の隙間にカメラとフードを再設置。するとシーソーが現れるようになり、慎重に見極めた後、捕獲器を設置して無事に保護することができました。

「よく『なぜすぐに捕獲器を置かないのか』と聞かれますが、災害時の初期対応において、いきなり捕獲器を使うのはNGです。なぜなら、被災地ではシェルターも動物病院も被災していて、猫を預かる場所も避妊去勢手術をする場所もありません。そんな状態で捕獲器を仕掛けてターゲット以外の地域猫や野良猫が入った場合、その場でリリースせざるを得ない。一度捕獲器に入って恐怖を覚えた猫は、二度と入らなくなってしまいます。また、他の飼い主さんが探している猫だった場合も、情報が揃わなければ逃がしてしまうリスクがあります」(安部氏)

 2024年1月に発生した能登半島地震でも直後に現地へ入り、長期間に渡って被災猫の捜索や保護を行ってきた安部氏には、災害時の“ノウハウ”が蓄積されているのです。

 こうしてシーソーは無事にご家族の元へ帰ることができましたが、もう1匹のヘイヘイは今も捜索中。どうやらビルの外へ出てしまったようで、捜索範囲を周辺の公園や近隣施設へと広げ、カメラを設置して聞き込みを行っています。その結果、1台のカメラにヘイヘイらしき姿が!ただ、ビルの周辺にはもともと17〜18匹ほどの地域猫が暮らしているらしく、不用意に捕獲器を仕掛けることはできません。

「新しく餌場を作り、ヘイヘイだけをピンポイントで捕獲できるよう慎重に動いています。ビルは倒壊の危険が進み重機が入る厳しい状況ですが、生存は確認できているので、温かく見守っていただければ幸いです」(安部氏)

 

 V-CATS JAPANは今回、「捜索チーム」「医療チーム」「預かりチーム」と役割分担を明確にし、合理的な体制を構築。それゆえに、高い帰還率を達成できていると言います。

「今回の活動は“熊本モデル”として次に生かせると思います。災害時にペットが行方不明になった際、最も大切なのは『探しているという情報を表に出すこと』です。情報がないまま時間が過ぎると、目撃されても野良猫と判断されたり、保護の機会を失ってしまいます。現在、V-CATS JAPANのホームページに『熊本地震迷子猫捜索依頼フォーム』のバナーを設置しています。被災地でペットを探していて、まだどこにも相談できていない方は、ぜひご連絡ください。情報が集まれば集まるほど、救える命が増えます!」(安部氏)

◇V-CATS JAPANホームページ

https://v-catsjapan.com/

◇V-CATS JAPANインスタグラム

https://www.instagram.com/vcatsjapan/

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