7月28日に発生した熊本県を震源とする地震。被災した飼い主とともに避難したものの、一時避難先から愛猫「しろちゃん」が脱走してしまいました。
捜索にあたったのは、一般社団法人V-CATS JAPANの一員として活動する「つかねこ動物愛護環境福祉事業部」(@tsukaneko222)。今回は「VCATSつかねこ」として被災地に入り、迷子になった猫の捜索活動を行いました。
土地勘のまったくない場所で、姿を消したしろちゃん。どのようにして、再び家族のもとへ帰ることができたのでしょうか。
家屋が倒壊…愛猫とともに友人宅へ避難
つかねこさんは、兵庫県尼崎市の動物愛護推進員のメンバーらが複数所属する団体です。TNR活動をはじめ、猫の保護や犬猫の譲渡会の運営、動物愛護の啓発活動などに取り組んでいます。
一般社団法人V-CATS JAPANでは、災害時に動物たちを救うため、獣医師や関係機関、団体などと連携。捜索・保護・獣医療・一時預かりなど、必要な支援を現場へつなげる活動を行っています。
その中で、つかねこさんは捜索実働部隊の責任者として被災地に入り、迷子猫の捜索や現場での対応を担っています。
今回、地震発生後に設置された「迷子猫捜索依頼フォーム」に寄せられたのが、しろちゃんの捜索依頼でした。
7月28日、飼い主の実家がある熊本県宇城市の家屋が倒壊。飼い主はしろちゃんとともに避難し、その後、市内にある友人宅へ身を寄せました。
ところが、突然の地震や避難生活によるストレスもあったのか、しろちゃんは一時避難先から脱走してしまいます。
そこは、しろちゃんにとって知らない景色や匂いに囲まれた、土地勘のまったくない場所でした。
「遠くへ行っていないのでは」怖がりな性格から捜索範囲を絞る
土地勘のない避難先で猫を捜すことには、普段とは違う難しさがあったといいます。
「周辺の地域猫や野良猫がどこにいるのか、猫がどこを通っているのかなど、通常の捜索で得られる周辺情報も、ほとんどありませんでした」
さらに考慮しなければならなかったのが、地震による環境の変化と、しろちゃん自身の性格でした。しろちゃんは「怖がり」だったといいます。
そのため捜索チームは、知らない土地を遠くまで移動しているのではなく、身を守るために脱走場所の近くに潜み、じっとしている可能性が高いと判断しました。
むやみに範囲を広げず、一時避難先の周辺を重点的に捜索。カメラを設置するとともに、聞き込みやチラシの配布を進めました。
こうした判断には、能登半島地震の被災地で、迷子猫を捜索してきた経験も生かされたといいます。
発災当日に「迷子猫捜索依頼フォーム」を開設
今回の活動では、現地で猫を捜すメンバーだけでなく、後方から支えるメンバーも重要な役割を担いました。V-CATS JAPANでは、発災したその日に「迷子猫捜索依頼フォーム」を立ち上げました。
「被災地では、飼い主さん自身も避難や生活の再建で、大変な状況にあります。だからこそ、迷子になった猫の情報をできるだけ早く受け取り、捜索につなげられる体制が必要だと考えました」
依頼を受けると、現地ではVCATSつかねこ捜索チームが聞き込みや捜索を実施。一方、後方では情報整理やSNSへの掲載、チラシ作成などを行いました。
さらに、ベータフォームへの登録やSAP(被災地保護動物データベース)への掲載など、できるだけ多くの人へ情報を届ける取り組みも進めました。そして、この連携が、しろちゃん発見への大きな一歩となります。
チラシを見た住民から目撃情報 8月6日に無事保護
周辺に集中的に配布したチラシを見た近隣住民から、「この猫を見た」という目撃情報が寄せられました。その情報をもとに捜索範囲をさらに絞り込み、8月6日、しろちゃんは無事に保護されました。
土地勘のない場所で脱走してから、再び大好きな家族のもとへ…つかねこさんは、今回の捜索で改めて地域の人たちの「目」の大切さを感じたと話します。
「私たちだけで捜せる範囲には、限界があります。でも、チラシを見た方が『この猫を見た』と情報をくださることで、捜索の方向を絞ることができます」
現地で探す人、後方で情報をつなぐ人、そして地域で見守る人。それぞれの力がつながったことで、しろちゃんは家族のもとへ帰ることができました。
約80件の迷子猫を把握 「そのうち帰る」と待たないで
しかし、被災地での捜索は、まだ終わっていません。
つかねこさんによると、今回の震災で把握している迷子猫の捜索依頼は約80件。そのうち約40件が、V-CATS JAPANへ直接相談を寄せられたケースだといいます。
これまでの捜索では約75%の猫が保護され、飼い主のもとへ帰ることができた一方、現在も捜索が続いている猫がいます。
猫が災害時に行方不明になった場合、「そのうち帰ってくるかもしれない」と待つのではなく、できるだけ早く行動してほしいと呼びかけます。まず大切なのは、関連部署への連絡や、警察・保健所への届出です。
災害時には、保護された猫が飼い主を確認できないまま、善意によって別の地域や他県へ移動する可能性もあるといいます。そのため、正式に迷子の届出をして、飼い主と猫をつなぐ情報を残しておくことが重要です。
「小さな情報」が離ればなれになった家族をつなぐ
V-CATS JAPANでは今回、捜索や保護だけでなく、被災した猫を安全に受け入れる一時預かりシェルターの整備も進めています。
シェルターメディスンの専門家による監修のもと、衛生管理などを含めた受け入れ態勢を準備。保護した後に必要な医療やケアへつなぎ、最終的に飼い主のもとへ戻すところまでを、一連の支援として考えているといいます。
能登半島地震の被災地でも活動してきたつかねこさん。そこで、愛する動物が被災者にとって「生きる希望」や「心の支え」になっている姿を数多く目にしてきました。
だからこそ、迷子になった猫を家族のもとへ帰すことは、動物の命を守るだけではなく、家を失った飼い主が復興へ向かうための支えにもなると考えています。
「街で迷子猫のチラシを見かけたら、普段より少しだけ目を向けていただけたらうれしいです」
「見たことがある」「この辺で見かけた」…。
何気ない情報が、しろちゃんのように、離ればなれになった家族を再びつなぐ大きな手掛かりになるかもしれません。
「一日も早く、すべての猫が家族のもとへ帰れるように。私たちも、最後の一匹まで捜索を続けていきます」