取引先との会食で趣味の話になったとき、東京都在住のSさん(50代)は、思いがけず身近な人たちの社会貢献を知ることになりました。何気ない会話だったはずが、帰宅後まで「自分は誰かの役に立つことをしてきただろうか」と考えてしまったといいます。
「献血とヘアドネーションが趣味」
数人で食事をしていたとき、取引先の40代男性が「私、献血とヘアドネーションが趣味なんです」と話し始めました。
結婚後から献血を続け、ヘアドネーションはすでに3回経験しています。 現在は4回目に向けて髪を伸ばしているそうです。
「若い頃にいろいろ迷惑をかけたので、少しでも社会に恩返しができればと思って」
Sさんは内心、「一体、若い頃にどんな迷惑をかけたのだろう」と気になりました。
さらに男性は、過去にヘアドネーションをした際の写真も見せてくれました。そこには、長く伸ばした髪を切った直後の、今とはまったく印象の違う、すっきりとした短髪姿が写っていました。
男性は、髪を寄付した後にかなり短い髪型にできるため、長く伸ばしてから一気に短くすることにも抵抗が少ないそうです。一方、女性は寄付後もある程度の長さを残したい場合があり、切った後もボブヘア程度の長さを維持しながら髪を伸ばす人もいます。
「同じヘアドネーションでも、こんなに違うんだ」
写真を見ながら、Sさんは驚きました。
「私も何回かやっています」
すると同席していた女性も、「私も何度かしています」と告白。さらに娘さんもすでにヘアドネーションを経験しているといいます。
Sさんにとっては知識として知っている程度だったヘアドネーションが、その場では複数の人にとって「実際にやったこと」だったのです。
さらに別の参加者からは、長年献血を続けている友人の話も出ました。献血の話で男性とも意気投合していたそうです。 その友人は、献血の記念にもらった「けんけつちゃん」のグッズを、LINEのアイコンにしているそうです。
身近な人たちが、特別なことをしているという感覚もなく、当たり前のように社会貢献を続けている。その事実に、Sさんは次第に焦りを覚えました。
「私は何をしてきたのだろう」
これまでSさんは、仕事や家族のことで精いっぱいで、自分にできる社会貢献について深く考えることはありませんでした。
それでも帰宅後、「私は誰かの役に立つことを、何かしてきただろうか」という思いが頭に浮かびました。
人と比べる必要はないと分かっています。ただ、身近な人たちの話を聞いて、「自分にも何かできることがあるのかもしれない」と、少し考えさせられたそうです。