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「ノネコ」→「イエネコ」表記変更案は撤回も…どうぶつ基金「問題は解決していない」 理事長が訴える残された懸念とは

渡辺 晴子 渡辺 晴子

環境省と農林水産省は7日に開かれた有識者検討会で、「生態系被害防止外来種リスト」の改定案について、野生化した猫を指す「ノネコ」の表記を、猫全般を示す「イエネコ」へ変更する案を撤回し、従来どおり「ノネコ」の表記を維持する方針を決めました。愛護団体などから「飼い猫や野良猫が安易に捕獲される恐れがある」と反対の声が相次いだことを受け、従来どおり「ノネコ」の表記を維持する方針です。

この問題を巡っては、公益財団法人どうぶつ基金が7月、5万1450筆(※8月11日現在7万2406筆)の署名とともに「イエネコ(飼い猫・野良猫・ノネコ)を防除推進外来種にしないよう求める」要望書を、環境大臣に提出していました。一連の経緯や今回の方針転換をどう受け止めているのか、同基金の理事長・佐上邦久さんに話を聞きました。

(※W Kahoriさんの署名を合わせると10万筆を超えているという)

「区別できないのに一括で対象とするのは矛盾」

どうぶつ基金はこれまで、環境省が「イエネコ」を防除推進外来種として扱おうとしていた方針に強く反対してきました。

最も問題視していたのは、環境省自身が飼い猫・地域猫・ノネコを現場で区別することは難しいとしていながら、「イエネコ」として一括で扱おうとしていた点です。

また、屋外へ出る飼い猫だけでなく、地域猫やさくらねこ、野良猫、ノネコまで対象と受け止められかねず、地域猫活動やTNR(不妊去勢手術をして元の場所へ戻す活動)、給餌活動への理解が後退することも懸念していました。

さらに、2023年に広島県で起きた猫虐待事件で、加害者が「ノネコだから殺していいと思った」と供述したことを挙げ、「防除推進外来種」という言葉が悪意ある人に利用され、「国が防除を推進している猫だから殺してもいい」という誤った認識を助長する可能性があると指摘しています。

同基金は、地域で猫の世話をするボランティアが「餌をやるな」などと圧力を受け、猫を引き取った結果、多頭飼育崩壊につながる事例も全国で起きていると説明。「防除推進外来種」という位置付けによって、地域猫活動が萎縮し、かえって野良猫が増える恐れもあると訴えてきました。

「猫を減らす方法はTNR」

どうぶつ基金は、環境省動物愛護管理室や全国598の自治体、さくらねこサポーター、ボランティアらと連携し、これまで44万頭を超える猫に無料で不妊去勢手術を実施してきました。

その結果、年間約23万頭(2006年度)だった猫の殺処分数は、2024年度には4866頭まで減少したとしています。同基金は、この成果は駆除ではなく、TNRや里親探しといった人道的な取り組みによって実現したものだと説明します。

こうした実績を踏まえ、猫の個体数管理は防除ではなく、TNRや適正飼養、里親探しによって進めるべきと主張。要望書では、イエネコ(ノネコを含む)を防除推進外来種として扱わないことや、猫の個体数管理を、動物愛護管理法に基づく適正飼養や地域猫活動で進めることなどを求めていました。 

また、環境省が公表した検討会資料では、第4回までは事務局が「ノネコ」を維持する理由を説明していたにもかかわらず、第5回では明確な科学的根拠の説明がないまま「イエネコ」へ方針転換したとして、決定過程の透明性にも疑問を呈していました。

一方、環境省は…

一方、環境省は、屋外にいる猫による希少種への影響や感染症リスクを踏まえ、飼い猫の屋内飼育や野良猫の不妊・去勢手術など適正な管理と、防除の重要性を広く周知する目的で「イエネコ」への表記変更案を示していました。しかし、パブリックコメント終了後、「飼い猫や野良猫が安易に捕獲される恐れがある」といった意見が相次いだことから、石原宏高環境相が再検討を指示。最終的に「イエネコ」への変更は見送り、従来どおり「ノネコ」の表記を維持することになりました。

なお、奄美大島など希少種への被害が確認されている地域では、これまでと同様に野生化した「ノネコ」を対象とした対策が継続されます。

   ◇   ◇

佐上理事長「『イエネコ』撤回だけでは問題は解決していない」

今回の方針転換については、公益財団法人どうぶつ基金の佐上邦久理事長は、次のように話しました。

「撤回そのものは、声を上げてくださった方々の力です。また、環境大臣に直訴してくださった議員の方々にも、国民の声をくみ上げて英断を下された石原大臣にも、心から感謝申し上げます。ただ、『イエネコ』への変更が撤回された一方で、『ノネコ』を残すという結論には、まだ筋が通っていないところがあります。

今回の議論の出発点は、『区別できない』ということでした。山で捕まえた1匹の猫が、ノネコなのか、野良猫なのか、逃げてしまった飼い猫なのか、現場では見分けがつかない。この点については、私たちどうぶつ基金も同じ認識です。検討会の委員は『実態としてノネコとノラネコは区別できない』と述べ、環境省の担当者も『ノラネコなのか飼いネコなのか一概に判別できない』と説明しています。

環境省自身の『動物虐待等に関する対応ガイドライン』にも、犬猫とノイヌ・ノネコを明確に判別することは難しく、山野で発見された犬猫であっても人が住んでいる範囲であれば原則として愛護動物として考えるべきだ、と書かれています。つまり、掲載に賛成する側も、反対してきた私たちも、そして環境省も、この一点では認識が一致しています。争いのない共通認識です。区別できないと全員が認めたのなら、選べる道は二つしかなかったはずです。

一つは、区別しなくてよいようにすること。猫全体を生物名の『イエネコ』として記載すれば、区別する必要そのものがなくなります。検討会の委員が求めていたのは、この方向でした。

もう一つは、対象にしないこと。区別できないものを防除の対象にすれば、飼い猫も野良猫も巻き添えになります。だから『イエネコ』『ノネコ』『イヌ』『ノイヌ』のすべてを載せない。私たちが求めてきたのは、こちらです。

ところが今回選ばれたのは、そのどちらでもありませんでした。『ノネコ』『ノイヌ』のまま据え置くという判断です。しかも、同じ環境省が、別の会議では正反対の判断に向かっています。

鳥獣保護管理の基本指針を見直す準備会合に環境省が提出した資料には、ノネコとノラネコ、飼い猫の区別が現場で困難であり、誤捕獲によるトラブルや動物愛護法違反のリスクがある、と明記されています。そして、その理由から、ノネコ・ノイヌを狩猟鳥獣から外す検討が始まっている。同じ『区別できない』という認識から、一方では対象から外そうとし、他方では掲載を続ける。この2つが、どう両立するのでしょうか。

私たちに寄せられた署名が求めていたのは、2つのことです。『イエネコ』という表記をやめること。そして、イエネコ(ノネコも)を防除推進外来種にしないこと。今回、表記の変更は撤回されました。しかし、区別のつかないものを国が駆除の対象に位置づけるという点は、そのまま残っています。求めていたことの、半分にしか答えられていません。

今回、10万筆を超える国民の悲痛な声が寄せられました。であるならば、国の選択は、『イエネコ』『ノネコ』『イヌ』『ノイヌ』のすべてを防除推進外来種から外すしかないでしょう。そして申し上げたいのは、猫を減らす方法は、すでに実証されているということです。

当基金は1988年から38年間、猫たちのために活動してきました。環境省動物愛護管理室、全国598の自治体、さくらねこサポーター、ボランティアの皆さんと手を組み、これまでに44万頭を超える猫に無料で不妊手術を行ってきました。当基金の関係者だけではありません。全国のシェルターや一時預かりのボランティアが、殺処分の前に猫を引き取り、育て、新しい家族を見つけてきました。

その結果、2006年度に年間23万頭だった猫の殺処分は、2024年度には4866頭。約98パーセント減りました。

これは駆除ではなく、TNRと里親探しという人道的な方法で成し遂げた成果です。そして、外来種リストへの掲載によって実現したものではありません。現場で1頭ずつ手術し、1頭ずつ家族を見つけてきた人たちが、成し遂げたことです。

猫の交通事故死も、同じように減っています。人と動物の共生センターの全国ロードキル調査によれば、政令指定都市・中核市で回収された猫の遺体は、2019年の7万9178頭から2023年には4万8459頭へ、37.5パーセント減りました。一方で、猫以外の動物のロードキルは、この5年間で12.4パーセント増えています。同センターは、他の動物種の生息環境が相対的に安定しているなかで猫だけが特異的に減っていると指摘し、その背景として、自治体による不妊去勢手術の助成制度と、民間のTNR活動による繁殖抑制の影響を挙げています。助成件数が多い自治体ほど、減少率が大きいという相関も確認されています。

ここは、はっきり申し上げたいところです。検討会では、日本では屋外の猫の多くが交通事故や寒さ、感染症で死んでいるひどい現状がある、愛護セクターが十分とはいえない、という趣旨の意見が述べられていました。現状が厳しいことは、私たちも否定しません。
しかし、数字は改善の方向を示しています。4年で37.5パーセント減。その間、猫以外の動物は増えている。そして、減らしてきたのは、まさにその愛護セクターが担ってきたTNRと、自治体の助成制度なのです。

十分ではないという指摘は受け止めます。ですが、成果が出ている手法があるのに、その数字を踏まえないまま駆除の枠組みへ位置づけようとするのは、順序が逆ではないでしょうか。

そして、たとえ今回のリストに『イエネコ』が掲載されていたとしても、この流れは何ら変わらなかったと思います。屋外の猫が減ってきたのは、リストに載ったからではありません。1頭ずつ手術をしてきたからです。掲載しても、この数字は動きません。減らす方法があるのに、なぜ駆除の枠組みに位置づける必要があるのか。

私たちは以前から、国に対してEBPM——エビデンスに基づく政策立案——を求めてきました。政府全体の方針であり、環境省もその一員です。

奄美では、その原則が守られなかったと考えています。2018年度に始まったノネコ管理計画は、アマミノクロウサギが危機にあるという前提に立っていました。しかし根拠とされた生息数の推定は2003年のもので、2000頭から4800頭という数字です。一方、2015年時点の推定は1万5200頭から3万9900頭。計画がつくられる前に、およそ10倍に増えていました。しかもその増加は、ノネコの捕獲が始まる前に起きています。

15年前の数字のまま施策が決まり、数億円の予算が投じられました。エビデンスに基づく政策立案とは、こういうことではないはずです。

そして、同じことが今、繰り返されようとしていないでしょうか。猫の交通事故死が4年で37.5パーセント減ったという調査は、誰でも見られる形で公表されています。それでも検討会では、屋外の猫が交通事故や寒さで死んでいるひどい現状が、掲載を進める理由として語られました。改善を示すデータには、触れられないままです。

猫のことを思ってくださるのであれば、まずその数字を見ていただきたい。何が実際に猫を救ってきたのかが、そこに表れています。第6回検討会は終わりましたが、正式な決定・公表はこれからです。私たちは、『イエネコ』『ノネコ』『イヌ』『ノイヌ』のすべてが防除推進外来種から外れるまで、最後まであきらめません」

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