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「車いす」の母を、娘「旅行に連れて行ってあげたいけれども……」 出発前に調べておくべき情報とは?【社会福祉士が解説】

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「本当は大好きな旅行に、また連れていってあげたいけれど……」

高齢になり、最近車いすを使う機会が増えてきた母を持つ40代の女性・中川かなえさん(仮名)は、そんなふうに悩んでいました。旅行中に段差で困る姿は見たくないし、かといって自分ひとりですべてをサポートできる自信もない。「それなら、行かないほうがいいのかな」と、あきらめかけていたのです。

「体の不自由がある中での遠出は、本人や介助者がつらくないか、自分たちだけで介助できるかなど、心配がつきものです。しかし、こういった旅の不安の多くは、事前の『ちょっとした情報収集』と『窓口への確認』で解消することができます」

そう背中を押してくれたのは、母親の介護保険申請時にお世話になった地域包括支援センターの相談員でした。中川さんが「車いすの母親と初めての1泊2日観光旅行」を叶えるまでの道のりを追いかけながら、出発前に押さえておきたいバリアフリー情報と、具体的な問い合わせのコツを見ていきましょう。

旅行前に確認すべきバリアフリー情報

相談員からは、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団が提供する「らくらくおでかけネット」(全国の駅やターミナルのバリアフリー設備を検索できるサイト)や、観光庁の「観光施設における心のバリアフリー認定制度」(バリアフリー対応に力を入れている宿泊施設や観光スポットを認定する制度)といった公的な情報源を教えてもらいました。

「観光施設における心のバリアフリー認定制度」とは、施設のバリアフリー性能を補う措置を講じたり、従業員への教育訓練を行ったり、外部サイトでバリアフリー情報を積極的に発信したりするなどして、バリアフリー対応に積極的に取り組む姿勢のある観光施設を、国が認定するものです。宿泊施設、飲食店、観光案内所、博物館が対象となっているので、宿泊先やレストランを選ぶときに、参考にすることができます。

「これなら自分でも調べられそう」と思った中川さんは、移動・宿泊・観光地の3つの視点から情報を集めることにしました。

◇交通機関

旅の始まりとなる移動手段では、段差なしで移動できるルートが確保されているかが最重要です。

・鉄道の駅や空港ターミナルなどの動線:「らくらくおでかけネット」では、駅やターミナルの構内図、車いすでの移動情報、車いす対応のトイレの有無などを調べることができます。また、福祉輸送サービス(車いす対応のリフト車やストレッチャーを備えた車両が利用できるサービス)の情報も掲載されています。

・車両の仕様:新幹線や特急列車には、車いすのまま乗車できる「車いす対応座席」や、デッキに車いすスペースが設けられている車両があります。これらは座席数が限られているため、事前の予約と確認が欠かせません。利用する予定の鉄道会社の公式サイトなどで調べることができます。

◇宿泊施設

泊まる場所のバリアフリーは、旅の快適性を大きく左右します。具体的には、以下のようなポイントを確認しておくとよいでしょう。

・客室のタイプと段差: 完全なバリアフリールーム(ユニバーサルルーム)でなくても、客室の入り口やトイレ・洗面所に大きな段差がない客室であれば、対応できるケースもあります。

・館内の動線: 部屋の中だけでなく、大浴場までエレベーターで行けるか、脱衣所に段差はあるか、食事会場は車いすのままテーブルに着けるかといった館内移動の確認が重要です。

・備品の貸出: 浴室用のシャワーチェア(高めの椅子)を貸し出している宿も多いため、これが利用できれば手荷物を大幅に減らせます。

◇観光地

せっかくの旅行ですから、現地での観光も楽しみたいものです。しかし、歴史ある寺社仏閣や自然豊かな景勝地は、階段や砂利道が多い傾向があります。

・迂回ルートの有無: 正面が階段であっても、脇にスロープや車いす用の迂回ルート、専用のエレベーターが用意されていることがあります。

・敷地内の舗装状況: 砂利道や石畳は車いすのタイヤが取られやすく、押す側もかなりの体力を要します。アスファルトや板張りで舗装されたルートがあるか、事前にチェックしておきましょう。

バリアフリー情報の問い合わせ例

実際に中川さんが、駅や宿泊施設にバリアフリーについて問い合わせたときの事例を教えてもらいました。

◇駅への問い合わせ

中川さんは新幹線を利用する際、車いす対応の座席を予約しました。そのうえで、乗車日の1週間前に発着駅の窓口へ電話を入れ、「手動車いすの母と利用します。階段の昇降が難しいため、ホームへの案内と乗車時のスロープの手配をお願いできますか」と依頼。利用日時や列車、座席番号に加え、車いすのサイズを伝えたことで、当日は乗り降りする駅の両方で、駅員がスムーズに誘導してくれたそうです。

◇宿泊施設への問い合わせ

宿への連絡では、予約前に「少しなら手すりで歩けるが、基本は車いす移動」というお母様の具体的な状態を伝えました。その上で「館内用の車いすや、大浴場用の高めの椅子の貸出はあるか」「食事会場に車いすのまま入れるテーブル席はあるか」を確認。事前に状況を共有したことで、宿側から「出入り口に最も近い席をご用意します」と配慮あふれる提案を受け、安心して当日を迎えられました。

旅の不安を安心に変えるために

「前もって気がかりなポイントを係の担当者に確認・共有することで、配慮を受けられることも多いのだと気づきました。母との観光旅行への不安が、少し減った出来事でした。背中を押してくれた地域包括支援センターの相談員さんにも、感謝しています」

中川さんは、そう語りました。

「現地で対応してもらえるだろうか」という不安は、事前のリサーチや問い合わせで解消できることがあります。事前に状況を伝えることで、施設側もよりスムーズな歓迎の準備が整えられます。

まずは近場の温泉宿や、ルートが分かる場所から、家族みんなが笑顔になれる素敵な旅の一歩を踏み出してみませんか?

【出典】
公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団「らくらくおでかけネット」
https://www.ecomo-rakuraku.jp/ja

観光庁「観光施設における心のバリアフリー認定制度」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kokorono_barrier-free/index.html

観光庁「宿泊施設におけるバリアフリー情報発信のためのマニュアル」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001250789.pdf

国土交通省総合政策局安心生活政策課「観光地におけるバリアフリー情報の提供のためのマニュアル」
https://www.mlit.go.jp/common/001284749.pdf

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

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