都内で働く45歳の真鍋さん(仮名)は、夏の帰省について相談しようと地方で一人暮らしをする78歳の母に電話をかけたところ、いつもと様子が違うことに気がつきました。「最近、体調が悪くて…」という母の声は弱々しく、心配になって詳しく聞いてみると、電気代の値上がりが続いているため、エアコンの使用を控えているといいます。
月7万円の年金で暮らす母にとって、夏の電気代は大きな負担です。「少しでも節約しなければ」と、日中も扇風機だけで過ごしているそうです。高齢者の中には体温調節機能が低下している人も多く、エアコンを我慢すると、室内であっても熱中症のリスクが高まります。
真鍋さんは、母の命に関わる問題だと感じ、すぐに電気代の支援制度について調べ始めました。実際にどんな制度があるのか、どこに相談すればいいのか、一緒に見ていきましょう。
2026年夏も実施される電気・ガス料金支援
真鍋さんがまず確認したのは、政府による電気・ガス料金の支援です。資源エネルギー庁のホームページを見ると、2026年7月から9月の使用分について支援が実施されることがわかりました。
ただしこの支援策は、社会情勢や市場環境などにより柔軟に検討・変更されます。必ず電気やガス会社の検針票と資源エネルギー庁の公式ホームページを確認するようにしてください。
▼電気料金(低圧・一般家庭向け)
7月・9月使用分:1kWhあたり3.5円の値引き
8月使用分:1kWhあたり4.5円の値引き
▼都市ガス料金
7月・9月使用分:1立方メートルあたり14.0円の値引き
8月使用分:1立方メートルあたり18.0円の値引き
母の家の電気使用量は月平均250kWh程度。計算すると、7月・9月は875円、8月は1125円の値引きとなり、3カ月合計で2875円の負担軽減になることがわかりました。
この支援は、基本的には利用者側の申請が不要で、電力会社が使用量に応じた支援額を毎月の料金から自動的に値引きします。ただし、多くの一般的な家庭では自動適用されるのですが、特殊な契約形態の場合、適用が異なる場合もありますので、電気・ガス会社の公式ホームページなどを確認しましょう。
真鍋さんはすぐに母に電話をかけ、「7月からは電気代の負担が少し軽くなるから、体調を優先して」と伝えました。
これに加えて真鍋さんが注意したのは、この支援に関連して個人情報や手数料を求める不審な電話が発生しているという点です。母にも「支援のために個人情報を聞く電話がかかってきても、絶対に答えないで」と念を押しました。
また、具体的な温度設定やリモコン操作の確認、フィルターの掃除なども、合わせて確認してもらうよう伝えました。
自治体独自の物価高対策給付も
自治体独自の支援は、国の支援と異なり、申請が必要なケースが多くあります。親が住む自治体のホームページや広報誌を確認し、利用できる制度がないか調べることが大切です。
◆地域包括支援センター
真鍋さんは、電気代の支援があっても、母の年金だけでは生活が厳しいのではないかと心配になりました。そこで、母が住む市の地域包括支援センターに電話で相談することにしました。
地域包括支援センターとは、市区町村が設置する、高齢者とその家族のための総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、介護だけでなく、生活全般の困りごとを相談できます。
真鍋さんが「母が年金生活で電気代を心配してエアコンを我慢している」と相談すると、担当の社会福祉士は丁寧に話を聞いてくれました。そして、「まずはご自宅を訪問して、お母様の生活状況を確認させてください」と提案してくれました。
後日、センターの職員が母の自宅を訪問し、生活費の内訳や困りごとを聞き取りました。その結果、母が利用できる支援制度がないか確認してもらうことになりました。
包括支援センターと社会福祉協議会のどちらに相談するか迷っても、まずはどちらかに連絡をとれば、相談内容に応じて適切な窓口を案内してもらえる場合があります。
◆社会福祉協議会の支援
社会福祉協議会では、生活費に困っている人への貸付制度(生活福祉資金貸付制度)や、日常生活の困りごとに関する相談支援を行っています。真鍋さんの母の場合、当面の電気代の支払いについて相談し、家計の見直しについてもアドバイスを受けることができました。
社会福祉協議会での貸付制度は、あくまで「貸付(返済が必要)」であり「給付(返済不要の支援)」ではありません。しかし状況によっては減免措置(返済額を減額する措置)がある場合もありますので、まずは窓口で相談することをお勧めします。
◆生活困窮者自立支援制度の相談窓口
地域包括支援センターからは、生活困窮者自立支援制度についても案内を受けました。生活に困っている人に対して、就労支援や住居確保給付金、家計改善支援などを行う制度で、年齢を問わず利用できるほか、家族からの相談も受け付けています。
早めの相談が解決への第一歩
真鍋さんは、地域包括支援センターに相談したことで、母が利用できる支援制度や相談先を知ることができました。「一人で調べていたら、ここまでたどり着けなかった」と振り返ります。
現在、母は2026年夏の電気・ガス料金支援が自動的に適用されることを知り、体調を優先して適度にエアコンを使いながら生活することができるようになりました。さらに、利用できる支援が確認できたことで、当面の負担軽減にもつながったといいます。
遠方に住む親の場合、電話だけでは生活の実態が見えにくいものです。夏が本格化する前に、親の生活状況を確認し、必要に応じて地域包括支援センターなどの相談窓口に連絡することが大切です。早めの相談が、親の命と暮らしを守ることにつながります。
【出典】
資源エネルギー庁「エネルギー価格の支援について」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/gekihen_lp/
電気・ガス料金支援 特設サイト
https://denkigas-gekihenkanwa.go.jp/
政府広報オンライン「生活にお困りの方の相談窓口があります」
https://www.gov-online.go.jp/article/201504/entry-7806.html
厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059425.html
困窮者支援情報共有サイト「自立相談支援機関 相談窓口一覧」
https://minna-tunagaru.jp/ichiran/
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。