大阪府堺市北区北花田町3丁に、一風変わった袋小路がある。集合住宅と戸建て住宅に挟まれた生活道路の先端が、ただ行き止まりになっているだけでなく、自動車が転回しやすいよう円形に整備されているのだ。
このような形状を「クルドサック」といい、進入してきた自動車はそのまま転回して、もと来た方向へ戻る構造だ。知らずに進入してきたドライバーからすれば、まるでトラップ(罠)にかかったように感じるかもしれない。
すぐそばに幹線道路があるのに通り抜けができず、場所的にも不自然な印象のあるこのクルドサックは、どのような経緯で形成されたのか調べてみた。
切り返さずにUターンできる「袋の底」
クルドサック(Cul-de-sac)とは、フランス語で「袋の底」を意味する言葉で、袋小路になっている道路の先端に転回スペースを設けた形状だ。自動車は通り抜けできないが、切り返すことなくスムーズかつ安全に方向転換して、元の方向へ戻っていく。
クルドサックそのものは全国的に珍しいものではなく、住宅地を自動車が通り抜けていくのを防ぐ目的で、計画的に設置される例もある。一例を挙げるなら、大阪府阪南市「阪南スカイタウン」の展望緑地では、転回部の中央に築山を設けて美観にも配慮されたクルドサックを見ることができる。
北花田のクルドサックのすぐ近くには、大阪市と堺市を結ぶ幹線道路「あびこ筋」が走っている。「あびこ筋」を目指して走ってきた自動車から見ると、「あびこ筋」へ出る交差点の一筋手前にある信号のない抜け道に見える。信号を嫌って抜け道のつもりで進入すると、その先は行き止まり。クルドサックを回って、元の道へ戻される仕組みだ。
ここはもともと、貫通した1本の道路だった。2000年代初めの航空写真を見ると、この場所にはまだ高速道路もクルドサックもない。道路は北へまっすぐ抜けて、その先の西除川沿いを走る道路へとつながる丁字路になっていたことが分かる。
それが、2009年に着工した阪神高速大和川線の建設に伴って道路が分断され、行き止まりとなった先端部分に、現在のクルドサックが設けられたのだ。
阪神高速道路のCS推進・広報部広報課に問い合わせたところ、次のような回答を得た。
「阪神高速大和川線の建設に伴い、本道路を含む周辺整備について、弊社が機能回復工事として、堺市からのご指示に基づき施工いたしました」
つまり、高速道路建設によって生活道路が分断されたため、その機能を補うためにクルドサックが設けられたというわけだ。尚、歩行者や自転車は、専用通路で「あびこ筋」側へ行き来できるようになっている。
単なる行き止まりにしなかった理由について、堺市道路計画課の担当者は次のように説明してくれた。
「行き止まりの道にすると、誤って進入してきた自動車が転回しようとして隣接者の土地に進入する恐れがあります。また、自動車がスイッチバックした際に歩行者の安全が担保されない恐れもあるため、回転体を設けました」
道路計画課からの情報によると、このクルドサックのサイズは、外径が半径4.9メートル、中央のゼブラゾーン部分は直径2.3メートルと、一般的なクルドサックと比べるとミニサイズだ。それでも、バイクや乗用車ならば無理なく方向転換できるスペースがある。
何気なく通り過ぎてしまいそうな小さな円形広場だが、そこには安全を守るための確かな理由と、街の歴史が刻まれていた。