「盲ろう児って、どうやってお話するの?」
遺伝子疾患により、生まれつき目が見えず、耳が聞こえない盲ろう児のいのりちゃん、4歳。いのりちゃんのママがInstagramに投稿した、サインを使った日常のコミュニケーションの様子を伝える動画に、「見ていて愛おしいです」「愛のある会話」と反響が寄せられています。
レーベル先天黒内障という進行性の視力障害と、先天性の重度難聴があるいのりちゃん。人工内耳(耳の中に機械を埋め込み、音の電気信号を脳に直接伝える医療機器)を装着し、かすかな音を頼りにリズムをとる遊びをしたり、身体を使ってトランポリンや鉄棒で遊んだり、両親とともに楽しく日常を送っています。
現在の主なコミュニケーション方法は、“サイン”。基本の形にいろいろなサインを組み合わせることで、相手に要求や気持ちを伝えています。成功体験を積み重ねながら、徐々にコミュニケーションの幅を広げているといういのりちゃん。
今回投稿された動画では、いのりちゃんが日常の気持ちや要求を伝えるための基本の形と、5つのサインを紹介しています。
▽基本の形
①クレーン行動(相手の手を引いて、自分の方へ誘う動き)→ 話しかけの合図
②あごをトントンとたたく → 食べたい・やりたい
③両手をパチパチとたたく → ちょうだい・やりたい
動画では、たこ焼き器を持ったいのりちゃんが、クレーン行動でママに話しかけ、あごをトントンとたたいて「遊びたい」という意思を示す様子が映し出されています。
▽サイン5例
①おなかをポンポンとたたく →トイレ
②耳に手を当ててポンポンとたたく → 人工内耳を付けて
③器を相手に手渡しする →おかわり
④両腕をゴシゴシこする動き →お風呂(早く寝たいの合図にも)
⑤両手でほっぺたをパチパチ→眠たい・おやすみ
「いずれは手話や点字へ移行していきたい」ママに話を聞いた
「障がいのことをもっと知ってほしい」と、SNSで発信を続けているいのりちゃんのママに話を聞きました。
――いのりちゃんのサインは、あらかじめ決めてから教えているのでしょうか?
「はい、こちらで決めてから教えています。手話やマカトンサイン(コミュニケーションに困難がある人や子ども向けの療法のひとつ)をベースとし、本人がやりやすい方法に少しだけ変えることもあります。
サインの種類は、家庭や保育園・学校の生活の中で増やしていき、各施設間での共有を大切にしています。今は、言葉の概念を理解するためにサインを用いていますが、いずれは共通言語である手話や点字への移行に向けて、日々の様子をみながらコミュニケーション方法を広げていっています」
――このサインができるようになってよかった、というサインはありますか?
「『トイレ』のサインです。本人からしてみれば、オムツの方が楽なので、“トイレに行き、用を足す”ということは、少し理不尽に感じているかもしれません。親としては、自由に楽しく生きてもらえれば、それが何よりなのですが、生きていくためには社会性も鍛えなければいけないので、『そういうもの』としてルールを覚えている最中です。
今は特に、集団生活の中で必要な『順番』『あとで』をできるようになってほしいと考えています」
初めてのサインは『食べる』伝わったことに安心した
――いのりちゃんとのコミュニケーションで印象に残っていることは?
「初めて本人から出たサインが『食べる』でした。ご飯を目の前に用意し、食べようとする直前に、こちらから『食べる』のサインを促すことから始めました。
その後も、いのり自身が『食べる』サインを出してから、お皿を渡して食べてもらうことを日々繰り返し行っていると、ある日、おやつを手に持ちながら、自分から『食べる!』とアピールしてきたので、『伝わった!』と感じ、とても安心したことを覚えています」
――家族の時間で大切にしていることを教えてください。
「いのりは目と耳から入ってくる情報が極端に少ないです。目と耳に不自由がなければ、遠い国の景色や音楽、今の様子なんかもネットを通せば、すぐに映像で知ることができます。
いのりにはそれが難しく、すべての実体験が経験となり、世界を作り上げていっています。
そのため、いのりには様々な体験をさせてあげたいと考えています。
季節を身体で感じてほしいので、季節の花を見に(匂いを嗅ぎに)行ったり、季節の食べ物を狩りに行ったりと積極的に出かけるようにしています。
また、直接身体に触れて過ごす時間も大切にしています。いのりがまだ自分で歩くことができなかったときから、『他者への興味』や『安心感』をもたせるために、手足や足先など常に身体のどこかしらをくっつけて過ごしていました」
――平日に半分ずつ通っている保育園と視覚支援学校(盲学校)について。
「週の半分を過ごす保育園は子どもたちの数が多く、たくさんの同世代に囲まれてにぎやかに過ごす刺激は、ここでしか得られない貴重な体験です。一方で視覚支援学校では、先生が常に付き添ってくれる場面も多く、生活基礎をていねいに学んでいます。
聴覚支援ではなく、視覚支援を選んだ理由は『点字学習』にあります。視覚情報が乏しいいのりにとって、点字は他と比べ、圧倒的に認識性が高い有効な言語ツールとなり得ます。
ただ、この先『小中高』と継続して視覚支援学校に通い続けることについては、現時点では“絶対”とはしたくないと思っています。あくまで進路はおおよそのものであり、決めつけはせず、常にそのときの状況を見て、選択肢を用意してあげたいなと考えています」
Instagram(@inori_2110)では、いのりちゃんの成長記録を見ることができます。note(https://note.com/karikari__)では、ママがいのりちゃんの障がいや育児について、思いをつづっています。