タイムラインに流れてきた、思わず目を奪われるほどに美しいデザートの写真。真っ白なベースの中に、赤や緑、黄色といった色鮮やかなゼリーの欠片が、まるで散りばめられた宝石やステンドグラスのように輝いています。
「アメリカ、韓国、日本のお友達、このデザートを見てください」
そんな呼びかけとともにXに投稿されたこの写真は、瞬く間に日本をはじめとする世界中で大きな話題を呼びました。この魅力的な投稿をしたのは、バルト三国のひとつであるラトビア共和国に暮らす、ラトビア人ロマンさん(@Roman_of_Spades)です。
この不思議で美しいデザートの正体や現地での親しまれ方、そして投稿に寄せられた世界からの反響や、「日本への愛」について、詳しくお話を伺いました。
赤、緑、黄色…カラフルなケーキは、現地の定番デザート
ラトビア人ロマンさんが「イタリアのパンナコッタに非常によく似ていますが、こちらはゼリーの欠片が入っています」と紹介してくれたこのスイーツ。一体どのようなお菓子なのでしょうか。
「ラトビアでは、このお菓子をいくつかの異なる名前で呼びます。一般的には『želejas torte(ゼリーケーキ)』や『mozaīka(モザイク)』と呼ばれていて、英語圏では『jelly cake』や『mosaic』と表現されますね」と、ラトビア人ロマンさんは教えてくれました。
さらに、ラトビアでは人口の約40%がロシア語を話しており、ラトビア人ロマンさん自身もその一人だといいます。ロシア語ではさらにユニークな表現が使われており、『Торт битое стекло(割れたガラスケーキ)』や『желейный торт мозаика(ゼリーのモザイクケーキ)』という、なんともロマンチックでエキゾチックな名前でも親しまれているそうです。
見た目の華やかさから、どこか特別なお店でしか買えない高級ケーキのようにも思えますが、身近なお店で売られている定番のデザートなのだそうです。
現地で愛される“日常の味”と手作りの温もり
これだけ美しいケーキであれば、誕生日や記念日などの特別なお祝いで主役になりそうですが、現地での位置づけは少し意外なものでした。
「ラトビアにおいて、このデザートはどちらかというと“懐かしの味”であり、とてもシンプルな存在です。実は、私の知る限りでは誕生日向けのものではありません。なぜなら、長時間冷蔵庫の外に置いておくと、ゼリーと同じように溶けてしまうからです」
そのため、特別なイベントではなく、日々の暮らしの中で楽しまれることが多いのだとか。ラトビア人ロマンさんにとってもこのお菓子は特別な思い出と結びついています。
「私たちは普段、日常の中で食べることが多いです。私は毎週金曜日にこのケーキを買うのが大好きなのですが、食べるたびに子どもの頃のことを思い出しますね」
現地では、リガにある「Rimi」や「Maxima」といった身近なスーパーマーケットの店頭に並んでおり、一切れあたり2〜3ユーロ(日本円で350〜500円前後)ほどで気軽に購入できるとのこと。ただし、スーパーで売られているのは小さなピースサイズが中心で、「大きくて立派なケーキは、通常はそれぞれの家庭で手作りするものです」と、家庭の味としての側面も教えてくれました。
「石けんみたい」!? 世界中から届いた驚きの反響
この美しいケーキにまつわる投稿は大きな注目を集め、もっとも反響の大きかった投稿は700万回表示を記録。地球の裏側にまで届く反響となりました。ラトビア人ロマンさん自身も、その世界的な広がりに驚きと喜びを感じているといいます。
「投稿が大きな反響を呼んだことについて、とてもおもしろいと感じています。特に気づいたのは、ヨーロッパからとても遠い国であるブラジルでもこの投稿が人気を集めていたことです。ブラジルの人々にとっても、子どもの頃にこれに似たお菓子を食べていたようで、懐かしい記憶を呼び起こすものだったみたいですね」
国境や文化を越えて「懐かしさ」が共有される一方で、アジア圏からはまた違った角度のユニークなコメントも届いたといいます。
「韓国の方々の中には、このビジュアルを見て『石けんみたいに見える』と言った人もいて、それを読んだときはちょっと笑ってしまいました(笑)」
文化の違いによる受け止め方のバリエーションを、ラトビア人ロマンさん自身も楽しんでいる様子が伝わってきます。
日本食レストランでの実習をきっかけに…深まった“日本への愛”
投稿の冒頭で「日本のお友達」と呼びかけていたラトビア人ロマンさんは、大の親日家でもあります。日本に興味を持ったきっかけは、ある素敵な経験からでした。
「私は日本が大好きです。理由はたくさんありますが、2018年に日本食レストラン『NOBU』で働く実習をして以来、日本に関するものすべてが好きになりました。日本の文化は本当に素晴らしいです!」
さらに、これまでに出会った日本人の印象についても、温かい言葉を寄せてくれました。
「日本の人々はとても美しく、素晴らしい美的感覚を持っていると思います。それ以上に、私が実際に会ったことのある日本の方々は、誰もが本当に親切でした。私は日本の皆さん一人ひとりに、心から敬意を持っています」
最近では、Xを通じて、日本の人々との距離もぐっと近くなったと感じているそうです。
「イーロン・マスクがXで自動翻訳機能を始めてから、日本の人たちとコミュニケーションを取るのがとても簡単になりました。それが本当に嬉しくて、実は先週から日本語の基礎を学び始めることにしたんです。日本語はとても美しい言語で、その響きが本当に大好きです。私はまだまだ、日本についてたくさんの良いことを学びたいと思っています」
そんなラトビア人ロマンさんの夢は、いつか実際に日本の地を踏むことです。
「日本を訪れる機会があればいいなと心から願っています。東京、大阪、京都、神戸、札幌、そして福岡に行ってみたいです。また、日本に行けたらぜひ美味しい和牛ステーキを食べてみたいですね!ヨーロッパでは和牛は非常に高価で、小さなステーキでも300ユーロ(約5万円以上)ほどすることがありますから。それから、大福もちも食べてみたいです。ラトビアにはないお菓子なのですが、少し似たような別のお菓子はあるんですよ」
美しいケーキをきっかけに、海を越えてつながった温かい交流。ラトビア人ロマンさんがいつか日本を訪れ、念願の和牛や大福もちを味わいながら、日本の友人たちと日本語で語り合える日が来るのが今から楽しみです。