ベテラン社員の2人に1人が若手社員との会話で「わかったふり」をした経験がある――そんな調査結果が、GNヒアリングジャパン株式会社(神奈川県横浜市)による「職場における世代間の会話実態調査」でわかりました。「わかったふり」をしてしまった理由にはどのようなことがあるのでしょうか。
調査は、聞こえに不安を感じている60~75歳のベテラン社員300人および、20~35歳の若者社員300人を対象として、2026年1月にインターネットで実施されました。
まず、若手社員に対して、「職場の60歳以降の上司・先輩との会話意向」を聞いたところ、仕事の進め方・考え方に関して、58.7%がベテラン社員との会話に前向きであることがわかりました。
また、これまでの経験・失敗談についても、56.7%が「話したい」と回答しており、若手社員はベテラン社員のこれまでの経験やスキルについて、もっと話してみたいという気持ちが浮かび上がりました。
続けて、上司・先輩との会話において、若手社員が「聞き取りテンポで気になること」を聞いたところ、「会話のテンポが合わない」(15.0%)、「はっきりとした話し方にしたほうがいいと思う時がある」(13.7%)、「聞き返されることがある」(13.0%)といった意見が上位となりました。
一方、ベテラン社員が「若手社員との会話において聞き取りで気になること」については、「声が小さくて聞き取りにくい」(26.3%)、「会話のテンポが速い」(10.0%)、「話すスピードが速い」(9.3%)が挙げられたことから、会話のズレは話題や価値観といった精神的なものだけでなく、互いの声の大きさや会話スピードといった物理的な要因がスムーズなコミュニケーションを阻害していることが明らかになりました。
そこで、若手社員との会話において、「相手の言葉がうまく聞き取れなかった経験はありますか」と尋ねたところ、ベテラン社員の93.3%が「ある」と回答。
さらに、相手の言葉がうまく聞き取れなかった際に、「聞き返さずにわかったふりをした経験がある」と答えたベテラン社員は53.7%と過半数にのぼりました。
ベテラン社員が「わかったふり」をしてしまった理由としては、「会話の内容から、何となく分かった気がしたから」(45.9%)や「聞き返すのは相手に申し訳ないと感じたから」(29.8%)に回答が集まり、相手への配慮や、会話の流れを止めたくないという心理から、曖昧なまま会話を進めてしまっている実態が見て取れました。
最後に、「もし若者との会話が聞き取りやすくなった場合に期待することはなんですか」と尋ねたところ、「より職場の人に声をかけてコミュニケーションを取れる」(35.7%)、「職場での関係が良くなる」(33.3%)、「若い考え方に触れられる」(30.0%)といった意見が上位に挙がったほか、「仕事や日常が楽しくなる」(22.0%)という人も一定数見られ、聞こえの改善が単なる機能的な回復にとどまらず、職場での交流促進や、働く意欲・楽しさの向上につながることがうかがえました。
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このような調査結果を踏まえて同社は、「厚生労働省の『令和7年高年齢者雇用状況等報告』によると、70歳までの就業確保措置を実施している企業は34.8%に達するなか、『聞こえ』の改善は、ベテラン社員が培ってきた経験やノウハウを十分に発揮し、いきいきと働き続けるための“前提条件”ともいえる重要な要素」と考察。
さらに、加齢による聞こえが悪くなる原因について、上智大学理工学部の荒井隆行教授は、「典型的な加齢性の難聴の場合、その主な症状として高い周波数が徐々に聞こえなくなり、『7時(しちじ)』と『1時(いちじ)』を聞き誤ったりします。円滑なコミュニケーションには、若手社員はゆっくり、大きな声ではっきりと話すように心がけることが大事。一方、ベテラン社員においては、話を聞く際に相手の口元を見ながら聞く、静かなところを選ぶことも重要です」と述べています。