壊れたアコースティックギターが、ゴミ置き場に捨てられていました。そんな一台を譲り受け、修理して蘇らせようとする投稿がXで話題になっています。投稿したのは、ギター製作を中心に発信しているれんたろさん(@rentaro_77)です。散歩中に偶然見つけた壊れたギターを丁寧に再生していく様子に、「こんなのどうするの?」「完成が楽しみ」といった声が寄せられました。
れんたろさんが最初に目にしたのは、ゴミの隙間からのぞくネックのヘッド部分でした。
「アコギのヘッドに立体的なヘッドマークが付くことはあまりないので、違和感があって『ナニコレ?』と目をやりました」
まさかそんな場所にギターがあるとは思わない中で、まずはその見た目の違和感が気になったといいます。
よく見ると、接着がはがれ、各部にも傷みがみられるなど、楽器としての機能を失っている状態で、捨てられていた理由もすぐに察したそうです。ただ、楽器製作を趣味にしているれんたろさんは、そこに別の可能性も感じました。
「時間と労力を注げば直せそう」
そう思い、このギターを修理して弾いてみたいという気持ちが湧いたといいます。
ちょうどその時、近くの車で仕事の準備をしていた店主に気づき、声をかけました。
「このギター、もし処分されるのなら修理してみたいので譲っていただけますか?」
すると店主は、
「こんなのどうするの?全然いいし持って行って!」
と快く応じてくれたそうです。れんたろさんはいったん自宅に戻り、車で回収しました。
れんたろさんは、趣味でギター製作やリペアを行っています。ただ、自身では「所詮は素人」と話します。それでも、このギターを“当たり”と感じた理由ははっきりしていました。ボディは乾燥状態がよく、接着部以外に割れもなく、修理可能なコンディションだったからです。さらに、掃除を進める中で木材の質のよさにも気づきました。
「特にネックの木には素敵な杢目も出ており、なかなかいい感じ」
ボディを叩いた時の音色からも、きちんと仕立て直せばライブでも使えそうなポテンシャルを感じたそうです。
このギターがKAWAI製だったことも、れんたろさんの興味を引いた理由のひとつでした。れんたろさんによると、KAWAIはエレキギターでは知られているものの、アコースティックギターの情報はほとんど見当たらないといいます。
1970年代初頭という時代背景の中で生まれた楽器だからこそ、フレットの減りやボディの傷から、前の持ち主がどんな音楽を奏でていたのか想像する楽しさがあるそうです。
「いい意味でも悪い意味でも、日本のギターが国内のみならず世界へも出荷される中、知識も道具も充分でない環境から生み出されたギターには、その作り方や構造、使用される木材や部品などに苦心した姿が浮かび、魅力を感じます」
修理はすでにかなり進んでいます。これまでにネック抜き、指板剥がし、ネックリセット、ブリッジ剥がし、ボディ破損部の復旧と修正までを実施しており、今後はブリッジ再接着、ブレイシングへのスキャロップ、指板接着、ネック接着、フレット交換、指板平面修正、塗装の手直し、ナットとサドルの作成、各部調整などを経て、演奏可能な状態を目指すそうです。ただし、破損の大きな原因が接着剤の品質不良にあるため、途中で再び分解が必要になる可能性もあるといいます。
投稿には大きな反響が寄せられました。れんたろさんは、こうした趣味は日本ではまだマイナーだと感じている一方で、
「自ら手を動かすことで前に進めるギター製作や修理は、始めてみるととても楽しい趣味です」
とコメント。自身の投稿をきっかけに、この世界に興味を持つ人が増えたらうれしいと話しています。
れんたろさんは毎月ライブにも出演しており、蘇ったこのギターでは、これまでとは違う表情の音楽を奏でてみたいと考えているそうです。
ギターの製作や修理の様子は、れんたろさんのnoteでも紹介されています。