「処分と言われても可哀想で…」
1月下旬の夕方、保護猫・ノラ猫の支援活動を行う団体「ねこから目線。」のもとに、一本の電話が入った。かけてきたのは葬儀会社だった。
年始に亡くなった男性の自宅に、猫が3匹取り残されているという。しかも親族は「家財と一緒に処分してほしい」と伝えてきたというのだ。
しかし、猫の年齢も性格も不明。費用の負担もない。通常であれば簡単に引き受けられる状況ではない。それでも担当者は「命の猶予がなさすぎる」と判断し、現場へ向かった。
家具はすべて撤去…それでも「いるはずの猫」が見つからない
現場に到着すると、家の中はすでに空っぽだった。家具はすべて搬出され、段ボールが1つ残るだけ。しかし、その中にも猫はいない。
「本当に室内にいるのか?」
そう疑うほど気配はなかった。
それでも「確実にいた」という証言を頼りに捜索を続けると、キッチン下のわずかな隙間に、体を縮めた2匹を発見。スマートフォンで撮影してようやく確認できるほどの狭さだった。なんとか引き出し、2匹の保護に成功した。
「もう1匹は外に逃げた」…写真もない中での捜索
安堵も束の間、残る1匹はすでに外へ逃げていたことが判明する。しかも写真もなく、特徴も曖昧なままの捜索だった。
トレイルカメラを設置し、自宅の玄関をわずかに開けて「戻って来られる環境」を作る。すると翌朝、カメラには複数の猫の姿が映っていた。その中で1匹だけ、家の中を覗き込むように動く猫がいた。
再び現れることを信じ、捕獲器を設置。約18時間後、その猫は警戒しながらも中に入り、無事に保護された。こうして、3匹すべての命がつながった。
「脱水と貧血」も…奇跡的に命は無事
発見時、猫たちは脱水と貧血の状態だったが、命に別状はなかった。
飼い主の死亡から約1カ月。誰も世話をしていなかったとみられるが、「初期にフードや水を多めに置いてくれた人がいた可能性がある」と推測されている。
一方で、長期間の飢餓状態のあとに急に食事を与えると命に関わる「リフィーディング症候群」のリスクもある。そのため、慎重に少量ずつ給餌を行い、約2週間かけて回復。やがて猫たちには表情が戻り、人に撫でられることも受け入れるようになった。
年齢は7〜10歳ほど。「きっと大切に飼われていた猫たちだったのでは」と担当者は語る。
実は多い「飼い主死亡で取り残されるペット」
今回のようなケースは珍しいものではないという。
同団体には、飼い主死亡による相談が「月に3件ほど」寄せられる。背景には、核家族化や独居の増加、近隣との関係の希薄化などがある。また、周囲の人が助けたいと思っても、「遠方の親族の所有物」という理由で手出しできないケースも少なくない。
「誰かが何とかしてくれると思わないで」
担当者はこう呼びかける。
「自分に何かあっても誰かがなんとかしてくれる、と思わないでほしい」
現在は、ペットのための信託や遺贈契約などの制度も増えている。万が一に備え、早い段階から準備しておくことが重要だという。
「本当によく頑張った」SNSには安堵と感謝の声
投稿には、
「3匹とも無事でよかった」
「保護してくれて感謝しかない」
「飼い主さんも安心しているはず」
といった声が多数寄せられた。
誰にも気づかれず、1カ月近く取り残されていた命。その裏には、「あと一歩遅れていたら」という現実があった。
今回の救出は、単なる“美談”ではない。同じことが、いつ誰の身に起きてもおかしくない…そう突きつける出来事でもある。