「ダウン症の息子から教わる本物の愛」と題した兄妹の動画がInstagramで766万回再生され、話題になっています。妹が生まれてから、まっすぐに愛情を届けてきたダウン症の男の子、あらたくん4歳。動画には、「胸がギューッと熱くなりました」「ご両親が自分にするのと同じように振る舞ってるのかな、愛しい世界ですね」と多くの反響が寄せられています。
ベビーバスケットの中で寝ている、生後間もない妹を愛おしそうに見つめるあらたくん。頭を優しくなでる姿は、お兄ちゃんそのもの。別のシーンでは、キッズカメラで妹をパシャリと撮影したり、ほっぺたのごはん粒を取ってあげたり…。妹へ向けられたあふれる愛情が動画から伝わってきます。
動画には、「妹が生まれてきてからずっと、たくさんの愛を伝えてきたあらた。最近は妹ちゃんも、あらたに愛を表現するように。あらたの愛はしっかり伝わっていたね♡」と両親がコメントを添えました。
ダウン症候群(21トリソミー)とは、通常2本である21番目の染色体が3本あることで発生する、先天性染色体異常症です。国立成育医療研究センターによると、ダウン症候群の方は、筋肉の緊張が低く、多くの場合発達に遅れがみられ、全体的にゆっくりと発達していきます。
暗黒期だった妊娠後期、そしてあらたくんとの生活が始まる
妊娠後期にダウン症候群の可能性を知ったママは、当時はそのことを受け入れることができず、「赤ちゃんと2人で消えてしまいたい」とすら思ったほどの『暗黒期』だったといいます。その中で、家族や周囲の人々に支えられながら覚悟をもって出産を迎えました。
あらたくんが生まれ、ダウン症の確定診断を受けた日に夫婦ふたりで決めたのは、「あらたを隠さない」ということ。「釣りに登山にキャンプにスノボに、自分たちが経験してきた楽しいことを、あらたにもたくさん経験してもらおう。わたしたちも自分のしたいことを諦めない。なにも犠牲にしない」ーー家族3人の生活はこうして始まりました。
あらたくんの生後半年を祝うInstagramの投稿には、ママの気持ちが残されています。
「この半年を振り返って思ったことは、あらたが生まれて失ったものはひとつもない。諦めたこともひとつもない。むしろうれしい出会いがあったり、たくさんの愛を感じた半年でした。
いま幸せですか?って聞かれたら、胸を張って『幸せです!』って即答できる自分がうれしい。あらたのことを好きになれてる自分がうれしいーー」
あらたくんも今では4歳。ダウン症や障がいのあるファミリーとのキャンプ交流会『PARACAMP(パラキャンプ)』を立ち上げ、SNSを通じて積極的に発信活動をしているあらたくんの両親に話を聞きました。
ーーあらたくんが妹さんと初めて会った時の反応はいかがでしたか?
「病院で初めて対面したときは、正直なところ大きなリアクションはありませんでした。『わかっているのかな?』というくらい静かな対面だったと記憶しています。でも、周りのみんなが赤ちゃんのことを『可愛い!可愛い!』と可愛がる姿を見て、息子も同じように可愛がってくれるようになりました。
妹が泣くと気にするようになり、顔をのぞき込み、頭をなでるようになり、気づけば「かーいー?(妹どこ?)」と探す存在になっていました。
“お兄ちゃんになった瞬間”があったというよりも、日々の生活の中で自然と関係が育っていった感覚です」
ーーお子さんが2人になってからの生活はいかがですか?
「楽しいです!でも、きれいごと抜きで言えば、大変なことも多いです。ワンオペの時は特に、体力・時間・精神すべてで余裕がなくなる瞬間があります。ワンオペでも、息子とふたりだった頃はよく外出していましたが、子どもが2人になると一気に大変になりました。家でご飯を食べる方が楽だし、ワンオペでの外出は少なくなったように思います。
それでも、子どもが2人になったことで見えた景色がたくさんあります。兄が妹に笑いかけ、妹が兄の鼻にキスをして、2人で声をあげて笑っている。その姿を見ると、『育てている』のは自分たちだけではなく、自分たちもまた、この子たちに育てられているのだと感じました。
また、『障がいのある兄』と『健常の妹』という構図で生活している感覚は、実はあまりありません。ただの兄妹で、ただの家族で、日常が流れている。もちろん配慮はありますが、特別扱いをすることよりも、今はできるだけ”普通に”日常を積み重ねることを大切にしています」
障がいがあるとアウトドアは難しい?自身の思い込みからスタートした活動
ーーパラキャンプの活動を通して伝えたいことはありますか?
「パラキャンプを始めたきっかけは、『障がいがあるとアウトドアは難しいのではないか』という自分自身の思い込みでした。でも実際にやってみると、確かに工夫や準備は必要ですが、“不可能”ではありませんでした。そして何より、自然の中では『障がいがある・ない』という線引きが、思ったより小さくなると感じています。
パラキャンプを通して伝えたいことは、
・障がいがあっても、家族で思いきり遊べること
・きょうだいも、親も、同じ景色を共有できること
・「支援される側」ではなく、「一緒に楽しむ仲間」になれること
です。
また、私たちが一番大切にしているのは、『きょうだいもたのしめること』。特にきょうだい児と言われる、障がいのある子のきょうだいたち。主役は障がいのある子、その子だけじゃない。家族みんなが主役。これからのいろんな節目に、パラキャンプで過ごした時間がそっと背中を押してくれる経験になったらいいなと願っています」
Instagram(@paracamp_art)やYouTubeチャンネル『ダウン症のあらたまる』では、あらたくんファミリーの日常や成長記録を見ることができます。ときに葛藤しながら日々を奮闘するパパの本音は、note『あらたまるパパ』で綴られています。