パニック障害やうつ病を抱えている自分だからこそ、描ける世界がある。MIKIKO.(Mikiko.(Miii))さんはそう思い、絵を描き続ける。
幼い頃から家庭内で暴力や暴言を見聞きしてきた、MIKIKO.さん。14歳の頃にうつ病と診断され、20歳の時にはパニック障害を発症した。
「外出に強い恐怖を感じる」 パニック症当事者の日常
初めて大きなパニック発作を起こしたのは、車の運転中。小さい頃からあった“漠然とした不安感”が爆発したように感じた。
MIKIKO.さんのうつ病は不安感が強く現れるため、身動きが取れない状態になる。トイレに行くために起き上がることすら怖く、時にはトイレ内で発作が起きることも。そうしたトラウマから、動くこと自体が怖くなった。
パニック症の症状は主に過呼吸、震え、めまい、吐き気。外出することがとても怖く、「出ないといけない」という気持ちから過呼吸が起きることもある。
「食料品を買うために車を運転してスーパーに行かないといけない時でも、入口で過呼吸を起こしてうずくまり、店内に入れないことがあります」
過呼吸は就寝中にも起き、目が覚めてしまうという。
「朝は過呼吸を起こし、冷や汗と動悸。不安感を持ったまま、1日が始まります。普通に生きることは困難だと感じます」
絵を描きながら“パニック発作”を乗り越えてきた
パニック発作は予測不能。いつ発作が起きるか分からず、一定の体調ではいられないため、一般的な就労は難しい。バイトも突然行けなくなったり、倒れて早退してしまったりして長く続けられなかった。
心療内科には20歳の頃から通っているが、治療の効果はあまり実感できていない。
「ただ、話をよく聞いてくださり、寄り添ってくれる医師のもとで薬の調節などをすることで心の安心感は得られています」
MIKIKO.さんの場合、発作時に薬よりも効くのは“絵を描くこと”だった。そのため、発作が起きると震える体を抑え、床を這ってキャンバスへ向かう。
「その姿は、ホラー映画に出てくるゾンビのようだと思います。でも、キラキラとした世界が紙の上に広がっていくのを見ていると、呼吸が自然に整っていくんです」
「どんな人でも希望は平等に持っていられる」を伝えたい
絵は幼少期から、心を支えてくれるものだった。物心ついた時から、絵を描くことが好きだったMIKIKO.さん。食後にテレビの前を陣取り、膝に乗せたお絵かき帳に絵を描くことは、緊張を強いられる家庭内での唯一の楽しみだった。
「私の絵には、うつ病の症状が酷かった時に寄り添ってくれた実家猫のテテくん(ノルウェージャンフォレストキャット)とマルくん(ラグドール)が登場することが多いです」
絵を通して、伝えたいテーマは“希望”。パニック障害を抱えていても、希望を持って生きている。過呼吸を起こしてゾンビのように這っていたって、心の中はキラキラと希望に満ち溢れている。希望は、どんな人でも平等に持っていられるもの――。そう届けたいと思っているからこそ、MIKIKO.さんの絵は色鮮やかで明るいものも多い。
「自分の心が躍るか、楽しいと思えるかが一番大切だと思っています。オーダーイラストを描かせていただく時にもお客様からヒアリングした項目を参考に、私の中のワクワクの世界を描かせていただいております」
「止めてしまったら、私も止まる」 絵を描くことは“生活”
不安な時、目を閉じてMIKIKO.さんの絵が家に飾ってあることを思い出したら安心できた。辛い思いをして帰宅した時、届いた原画を開封した途端、安心して涙が出た。MIKIKO.さんの絵には、そうした嬉しい反響がたくさん寄せられている。
中でも心に残っているのは、「あなたの絵を見て、なぜか泣けてきました」という言葉だ。
「その人の心の拠り所になれているのかなと感じられる言葉を貰えると、嬉しくて泣けてくるんです」
絵を描くことは、ご飯を食べる、トイレに行く、お風呂に入ることと同じくらいの意味を持つ。そう話すMIKIKO.さんは制作活動を“生活”と表現する。
「止めてしまったら、私も止まってしまいます」
同じような生きづらさを抱える人にとってMIKIKO.さんの絵は心の避難場所にもなるはず。苦しみを知っているからこそ描けるアートの中には、優しい希望が存在している。