40代の会社員Aさんは、最近届いた1通の封書を見て目の前が真っ暗になりました。妻名義のクレジットカード会社からの督促状でした。専業主婦である妻が、内緒でリボ払いを繰り返し、数百万円もの借金を作っていたのです。
思えば、妻は毎日のように届く宅配便を「安物だから」とはぐらかし、ママ友との高額なランチ会にも頻繁に出かけていました。Aさんが家計の状況を尋ねようとすると、妻は「私を信用してないの!?」と激高。調べてみると、家計は火の車でした。
発覚後、妻は「次は気をつけるから」と泣いて謝るばかり。しかし数日後には、また新しい洋服をネットでチェックしている姿がありました。破滅が見えているのに買い物をやめられないのでしょうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞きました。
欲しいのは「物」ではなく、買った瞬間の「高揚感」
ー妻が浪費に走る心理的背景は?
人は、心の中にある「満たされない隙間」を埋めるために、目先の快楽に溺れてしまうことがあります。浪費癖や買い物依存症の方は、品物が欲しくて買っているわけではないケースが非常に多いのです。
お金を使って「ありがとうございます」と丁寧に扱われる体験や、新しい物を手に入れた瞬間の高揚感……。その一時の快楽が、日常のストレスや将来への不安を忘れさせてくれるのです。
ー夫が「やめてくれ」と説教をしたり、カードを取り上げたりするだけでは効果がないのでしょうか?
残念ながら、依存に近い状態にある人に「意志の力」を求めても、根本的な解決にはなりません。それどころか、夫を「自分の楽しみを奪う敵」と見なすようになり、隠れて借金をしたり、さらに嘘を重ねたりと、状況を悪化させるリスクがあります。
有効なのは、まずは夫側が「この人は今、正常な判断ができない状態にある」と認識することです。その上で、一方的に責めるのではなく「気づけなくて悪かった。一緒にこの苦しさから抜け出そう」という共感の姿勢を見せてください。
例えば、一緒にお金をかけずに体を動かすウォーキングを始めたり、共通の趣味を持ったりするなど、買い物以外で脳が心地よいと感じる刺激を夫婦で作っていくアプローチが有効です。
ー「買い物依存症」の疑いがある場合、どのように専門機関へ相談すべきですか?
家計が破綻しかけているのに嘘をついて買い物を続けるのは、もはや性格の問題ではなく、アルコールやギャンブルと同じ依存症という病気の領域です。
夫婦の話し合いだけで解決しようとせず、早めに心療内科や精神科などの専門医に相談することを検討してください。「あなたを治したい」と伝えると拒絶されるため、「最近眠れてなさそうだから、一度相談に行ってみよう」と、体調を気遣う形で促すのがスムーズです。
最悪の事態(離婚や自己破産)を避けるためにも、まずは夫が一人で抱え込まず、専門家の力を借りることが、再生への第一歩となります。
◆木下雅子(きのした・まさこ) 行政書士、心理カウンセラー
大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、お客様を支えている。