tl_bnr_land

白杖を理由に世界遺産・二条城の本丸御殿への入場を制止された視覚障がい者 「差別的対応だ」と憤り 二条城側の見解は?

平藤 清刀 平藤 清刀

視覚障がい者が携えている「白杖」をめぐって、世界遺産・元離宮二条城(もとりきゅうにじょうじょう/以下、二条城)で昨年、あるトラブルが発生した。白杖を携えた男性が本丸御殿に入ろうとしたところ、入り口にいたスタッフに制止されたという。

男性が「障がいを理由に差別的な対応を受けた」と主張する一方で、二条城側は「文化財を保護するための判断であり、差別的な意図はありません」と説明。双方へ取材してみると、その背景に「どちらが正しい」ではない、ルールを運用する難しさが浮かび上がってきた。

視力1.0でも白杖を携えている人もいる

2025年11月11日、視覚障がいのある男性が二条城の本丸御殿へ単独で入場しようとしたところ、入口のスタッフから制止された。男性は視覚に障がいがあり、白杖を携えていたため、スタッフから「白杖で展示物(障壁画)を傷つける恐れがある」として入場を断られた。この男性は、自分は全盲ではなく「右同名半盲」であり、単独歩行が可能であることを説明したが、理解を得られなかったという。また、このとき、スタッフから「警備員を介助につける」と提案された。

「初めの段階で、対話を通じて介助者の手配などを提示してほしかった」

男性によると「右同名半盲」とは、視野の右半分が欠けている障がいで、「右目が見えない」のではなく、両眼で見た視野の「右半分」が見えない状態とのこと。

「脳出血の後遺症で高次脳機能障がいがあり、身体障害者手帳5級を交付されています。でも、視力は両眼とも1.0あって杖なしでも歩けますが、道路交通法第14条に則り、外出時は常に白杖を手にしています」

道路交通法第14条は「目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。以下同じ。)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない」と定めている。ほかにも、白杖を携える視覚障がいには、視力はあるが視野が極端に狭い(中心暗点など)、夜間や暗い場所で見えない、色の判別が難しい、足元が見えにくいなどがあり、白杖=全盲というわけではない。

男性はスタッフとのやり取りの後、その足で二条城事務所を訪れて、スタッフの対応について苦情を申し入れた。これに対して二条城事務所は「本丸御殿内は通路が狭く、白杖使用は障壁画や唐紙の壁紙などに接触し傷つけてしまう可能性があるため、車いすの利用や警備の者が同行することでご観覧いただけることを説明いたしました」としながらも、説明不足があったのであれば申し訳ありませんと謝罪するとともに「当該運用によりご不快な思いをさせてしまった点について謝罪した上で、文化財の保護と公開の両立についてご理解とご協力をお願いしました」という。

世界遺産を守る責任と一律のルールから生じる摩擦

二条城は1603年(慶長8年)に、江戸幕府初代将軍徳川家康が、天皇の住む京都御所の守護と将軍上洛の際の宿泊所とするため築城した、由緒ある文化財だ。城内には貴重な文化財が保存・展示されている。1994年にはユネスコ世界遺産にも登録された。

男性とのトラブルに関して「白杖を使用していること自体を理由に排除する意図はなく、国宝・重要文化財である障壁画を守るための現場判断でした」と説明。白杖が展示物に接触する可能性を懸念し、結果として制止という対応を取ったという。

このような文化財施設では、来場者の安全確保と同時に、不可逆的な損傷を防ぐ責任を負っている。現場スタッフが、瞬時にリスクを判断しなければならない状況も少なくない。その一方で、障がいの特性や個別事情を十分に把握しきれないまま対応が進むと、結果的に「一律の制限」と受け取られてしまう懸念もある。

今回のトラブルは、ルールの運用と現場判断の難しさを物語っている。

二条城事務所は、「白杖は、接触させることによって情報を得る機能があると認識しております」としたうえで、「白杖を携帯されている方が全盲か否かに関わらず、接触による文化財の棄損を避ける目的で、白杖を携帯した方のおひとりでの入殿をお断りさせていただいております。従いまして、障がいの有無や障がいの程度、内容に関わらず、接触による文化財棄損の恐れがある場合には、持ち込みや入殿をお断りするとともに、必要な場合はそれに代わる対応(介添えや車いすの利用)を行う運用をしております」とのこと。現に、入口のスタッフは、男性に対して警備員を介助につけることを提案している。

文化財を物理的に守るという目的と、障がいのある人の利用をどう両立させるのか。その答えはひとつではないし、もちろん今回の出来事も「どちらが正しい」とジャッジする意図はない。今回のすれ違いを「制度と運用の課題」として共有することが、次の改善につながるのではないだろうか。

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース