奈良県大和郡山市馬司町を通る国道193号「市場南入口交差点」から、南へ150mほど進んだ地点にある1本の電柱。
周囲は典型的な「郊外の町」といった佇まいで、カラスの姿が目立つ。電柱のてっぺんにいるフクロウは、ピクリとも動かない。よく見ると、それは精巧に作られた「フクロウのようなもの」、すなわち置物だった。一見、街の風景に溶け込んだ置物には、地域を守るという重大な使命が託されていた。
カラスやムクドリなど鳥害対策に効果抜群
置物が設置されている電柱は、「味の店 たこ坊」と定食・喫茶「花一番」の間にあり、道路を挟んだ向かい側には「業務スーパー」がある。「味の店 たこ坊」と「花一番」で話を伺ったところ、フクロウの置物は、カラスやムクドリなどのフン害防止や巣作りをさせないために設置されたという回答を得た。飲食物を扱う店が集まっているので、とくにフン害は衛生的にもよろしくない。
「花一番」店長の話によると「効果抜群ですよ!カラスが激減しました」とのこと。だが、疑問は残る。私有地にある看板や屋根の上ならいざ知らず、設置されている場所は電柱のてっぺんだ。一般人が勝手に登って良いはずはなく、しかも危険だ。
電柱の所有者か管理者に尋ねたら、もっと詳しいことが分かるはず。電柱に表記されている記号から、この電柱はNTT西日本が所有し、関西電力も使用していることが分かった。両社に問い合わせたところ、関西電力が設置したものと判明した。
正しくは「ミミズク」 停電を防ぐためのインフラ防衛
回答をくれた関西電力送配電株式会社地域コミュニケーション部広報グループによると、置物は「フクロウ」ではなく「ミミズク」だった。
ミミズクは、フクロウ科の中で「羽角(うかく)」と呼ばれる耳のような飾り羽をもつ種だ。電柱に鎮座する置物をあらためてよく見ると、なるほど羽角が確認できた。これが「2024年2月までには設置されていました」とのこと。
下から見上げると分かりづらいが、サイズは約50cm、材質は軽量なポリエチレン樹脂製だそうだ。
電柱のてっぺんに設置している理由を尋ねたところ、やはり鳥害対策で、カラスやムクドリによるフン害の抑制、および電柱への巣作りの防止が目的だった。
特にカラスは、金属製のハンガーなど針金類を集めてきて巣をつくることがある。それが電線に接触して感電すると、周辺一帯に停電を引き起こす恐れがある。つまり、このミミズクは単なるカラス除けにとどまらず、地域の電力インフラを停電から守る役割も担っているのだ。
余談ながら、大阪市で運航されている「渡船」発着場のうち「落合下渡船場」に、フクロウの置物が設置されている。羽角らしきものがあるからミミズクにも見えるが、渡船の乗員から「野鳥除けのフクロウです。フンをされたら掃除が面倒なので」と聞いた。ミミズクとフクロウの違いはあるが、同じ目的で設置されているのが面白い。
関西電力では、このような対策は地域によって設置数にバラつきはあるものの、関西エリア全域で必要に応じて実施されている。ミミズク型の置物以外にも、現場の状況や寄せられる鳥害情報の内容に合わせて、様々なツールを使い分けているという。
ふだん何気なく通り過ぎる電柱のてっぺんで、人知れず鋭い眼光を放つミミズクの像は、街の美観と途切れることのない電気の供給を静かに守り続けているのだ。