ある男性が海岸清掃中に拾った、八角形の謎のプラスチック片。その正体は、朝鮮半島式将棋「チャンギ」の駒でした。正体が分かってから足かけ6年。玄界灘沿岸で拾い集めた駒を、ついに一盤面分・32個すべてそろえたという報告がXに投稿され、注目を集めています。
投稿したのは、日頃から漂着物を拾う「ビーチコーミング」の様子をSNSで発信している、Dennyさん(@De2_trash_rush)です。
最初の1個を手にしたときのことを、Dennyさんはこう振り返ります。
「八角形のプラスチックに『包』の文字が刻まれていて、いったい何に使われるものだろう? と真剣に悩みました」
用途が分からないまま、正体が判明するまでポケットに入れて保管。その後も同じような「謎のモノ」を拾うたびに気になっていたといいます。それから数カ月後、ふと過去に読んだ漫画を思い出し、「これはボードゲームの駒ではないか?」とひらめいたそう。調べていくうちに、それが朝鮮半島式将棋「チャンギ」の駒だと分かり、プラスチック片を見る目は一変。
「『未知なる漂着物が未知ではなくなる瞬間』は、カミナリに撃たれたかのように衝撃的でした。一気に、漂着物探しの面白さに引き込まれましたね」
それからは、駒専用のケースを作ったことで、「一盤面分をそろえなければ」という謎の使命感が芽生えたと話します。体感的には「3回行って1個拾えるくらい」の打率だそう。こうして足かけ6年で集めた駒は32個。最後の1個は楷書体の「象」でした。
「あと1個という状態からがとにかく長くて、1年以上かかりました。海岸に足を運ぶ度、すでに持っている駒ばかり拾い続ける時期もあって…。全部そろって、めちゃくちゃ嬉しかったと同時にホッとしましたね」
投稿された、完成した盤面の配置は、駒一つひとつに語りかけるように入れ替えながら決めたのだとか。
Dennyさんは漂着物を拾う際のコツとして、「広く見渡しながら直感を頼りにすること」だと語ります。
「最初はぼんやり歩いていて、センサーが反応した場所を凝視すると、そこには何かがあるんです。形の違いも重要な手がかりになります。チャンギの駒は八角形なので目に入りやすいですし、両面に文字が刻まれているので見つけやすいです」
一方で、中国式将棋「シャンチー」は丸型のためペットボトルキャップなどに紛れやすく、片面にしか文字がない場合は気づきにくいそう。
探索の中では、印象的な“当たり日”もあった。
「過去には、1日でチャンギを4つ拾えたことがあります。その日は、中国の大きな麻雀牌やプラスチック製の海外硬貨のおもちゃも拾えて、大収穫でした」
海岸で拾い続ける原動力について、Dennyさんはこう話します。
「今回の投稿がこんなに注目されるとは思っていませんでした。私には、『海岸はごみのない綺麗な場所であって欲しい』という思いがあります。ただ、漂着物にはそれぞれのストーリーがあります。だからこそ、単にごみとして片付けるだけでなく、そのルーツを考えることが大切だと思っています」