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「怖かった“大きな手”が、安心に変わるまで」頭に傷を負った子猫が心を開いた瞬間とは?

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「さいしょは怖くて怖くて、どうしたらいいかわからなかった」

そんな言葉とともに投稿された1本の動画が、多くの人の心を打っている。

映っているのは、頭に傷を負い、最初は“シャー”と威嚇していた子猫が、やがて人の大きな手に身をゆだねていく姿だ。

投稿したのは、保護猫写真家の三吉良典さん(@ryostory1124)。動画の主役は、保護猫の「バジル」ちゃん。その変化の裏には、時間と忍耐、そして「諦めない」姿勢があった。

警戒心が強く、なかなか保護できなかった子猫

実はバジルちゃんには兄妹がいた。兄妹2匹は比較的早く保護できたが、バジルちゃんだけは警戒心が何倍も強く、なかなか近づけなかったという。

「それでも諦めず、毎日のように現場に通っていました」

ある日、三吉さんは異変に気づく。バジルちゃんの額が赤くなり、日を追うごとに傷が広がっていったのだ。

「早く保護しないと…という焦りがありました」

幸い、日々のコミュニケーションの積み重ねが実を結び、数日後に無事保護。動物病院では、カラスなどに突かれた可能性が高いと診断された。

「このタイミングで保護できなければ、感染症の恐れもあったと思います」

生後2カ月で保護、今は1歳に

保護当時、バジルちゃんは生後およそ2カ月。塗り薬で治療し、約2カ月後には傷跡もほとんど分からないほどきれいに治った。ただし、治療は簡単ではなかった。

「シャーシャー威嚇されながら、薬を塗るのは大変でした(笑)」

現在、バジルちゃんは無事に里親が決まり、1歳に成長している。

「心を開いた」と確信した、小さなサイン

動画では、バジルちゃんが人の手に甘える姿が映っている。しかし、そこに至るまでには、数え切れないほどの“小さな変化”があった。

「威嚇する姿、怖さで目をぎゅっと閉じる姿、チュールの誘惑に負ける姿…。全部が印象的です」

なかでも、三吉さんが「決定的だった」と語る瞬間がある。

「遠くから“大きな瞬き”をしてくれた時です」

猫がゆっくり瞬きをするのは、「敵ではない」「信頼している」というサインとされている。

「その瞬間、『もう大丈夫だ』と感じました。僕も同じように瞬きを返して、『ありがとう』と声をかけました」

手がかかるほど、心を開いた瞬間は尊い

動画の中で、バジルちゃんは人の“大きな手”に身を預けている。その光景を見たときの気持ちを、三吉さんはこう振り返る。

「手がかかればかかるほど、心を開いてくれた瞬間の感動は大きい」

長い時間をかけて向き合い、恐怖を乗り越えてくれたことへの感謝が、思わず涙となってあふれたという。

「信じて、声をかけ続けること」

三吉さんは、バジルちゃんの姿を通して伝えたいことがあると話す。

「外見だけでなく、心の傷が深い子ほど、信頼には時間がかかります」

それでも…「諦めずに声をかけ、寄り添い、愛情を注ぎ続ければ、きっと心は開いてくれる」

純粋な動物たちは、人の気持ちを感じ取る力を持っている。信じること、そして待つことの大切さを、バジルちゃんは静かに教えてくれた。

多くの人の手で救われた命

最後に三吉さんは、支えてくれた人たちへの感謝を口にする。

バジルちゃんと兄妹のミント、パセリ、そして母猫マリーちゃんのTNRに関わった人々。動物病院のスタッフさん、応援してくれたフォロワーさんたち。

「たくさんの手があったからこそ、救えた命です」

怖かった“大きな手”が、安心に変わるまで。その時間の尊さが、多くの人の心に静かに残っている。

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