今年は阪神・淡路大震災から30年の節目の年。震災を風化させないためのイベントも多く企画された一年だった。今後30年以内には70~80%の高確率で南海トラフ地震が発生するとも言われており、地震以外の台風や豪雨もある。災害の多い日本で暮らすなら防災備蓄は必須だが、実際に「なにをどれだけ」と考えると自信がない。そこで今回は、サントリーが提唱する新しい防災備蓄の考え方 “ちょ備蓄” について取材してきた。
災害時に感じた防災への備えの必要性
兵庫県出身の私は、小学生の時に阪神・淡路大震災を経験した。当時大阪まで通勤していた父が大きなリュックを背負って徒歩で会社へ向かい何日も帰らず不安だったこと、近隣に仮設住宅が建ち並び神戸からたくさんの転校生がやってきたことを覚えている。その後、大人になり、今度は2018年に大阪府北部地震を経験した。家具の転倒などの直接の被害よりも、当時幼稚園児と小学生だったの娘たちの心のケアや、なによりも震災後の物資不足に一番悩まされた。コロナ禍もそうだが「〇〇がなくなりそう」という人の噂だけで、一気に買い占めが起こりスーパーの棚が空になった。やっていたつもりだった「いざというときの備え」が十分でなかったことを痛感した苦い経験だ。
サントリーが提唱 “ちょ備蓄”にヒント
2度の震災の経験を生かし、さすがに簡単なレトルト食品や水などの備蓄は用意するようになった我が家。ただ、水や食料の備蓄目安量をご存じだろうか? 水だと1人一日3Lを最低でも三日分、できれば一週間分が推奨されている。4人家族の我が家の場合、3日で36L!1週間なら、なんと84L!? これに食料もとなると、マンション暮らしには保管場所の問題もあり現実的ではない。「この量じゃアカンやん」と内心悶々としていたが、サントリーが提唱する“ちょ備蓄”という新しい防災備蓄の考え方を知り、目からウロコの気付きがあったのでぜひ紹介したい。
防災は特別じゃない ちょっとずつ備える
“ちょ備蓄”とは、「サントリー天然水」の新たな防災備蓄啓発活動として今年発表されたプロジェクト。サントリーの担当者は「備蓄は“全部揃えよう”と完璧を求めすぎると負担になる。ちょっと意識を変えるだけで、日常の行動が備えに繋がるのでは」と話す。
「ちょ備蓄」のWEBサイトでは、【特売日に多めに買っておく】【子どもが好きなお菓子をちょっと買い足しておく】といった「えっ、そんなことでいいの?」と思うような具体的なアイデアが多数紹介されている。確かに、非常時だからこそ普段食べている物の方が喉を通りやすいだろうし、「いつものお菓子」は子どもたちのメンタルケアにも役立ちそう。災害用のものをわざわざ用意するのではなく、ローリングストックなら賞味期限切れも防げそうだ。
押入れなどのスキマも保管場所に
前述した保管スペースの問題でいうと【家中のスキマ】に分散させて保管するアイデアも。確かに1箇所にまとめて保管だと、災害時に何らかの理由でその部屋に入れなくなる事がないとは言えない。押入れや、戸棚のデッドスペースなど家中のスキマ=保管場所だと捉えれば意外とたくさんの飲料水や食料をストックできそうだ。あとは【水の定期便契約】も、もしもの時のお守りになりそう。各家庭が無理なく備えることで、災害時に一気に買い占めが起こるなどの社会的混乱を防ぐ事にも繋がる。「完璧な備蓄」を目指して動けなくなるぐらいなら、まずは「すぐできる事」から。防災備蓄へのハードルがぐっと下がった。
◆中口のり子 芸術系大学卒業後、出版社にて地域情報誌の企画提案や取材などを担当。結婚・出産を経て、デザイナー&ライターとしてフリーランスに。ラジオ関西の情報サイト「ラジトピ」への寄稿ほか、大阪・兵庫を中心に活動。グルメから美容まで、最新の流行がいち早くキャッチできるこの仕事は天職!?