ルッキズム(外見の美しさを重視する考え方)という言葉が問題視される今も、外見にまつわる悩みは尽きません。そんなルッキズムに支配されたクラスを舞台に、最底辺とされる女子たちの姿をコミカルに描いた『ルッキズムにずっとん落ち』(作・蒼井きとりさん)がSNSで話題を呼んでいます。
物語は、主人公の波多野が「私たちはいつも2人セットだ」と語るシーンから始まります。クラスの最下位には、自称「眼鏡ブス」の波多野と、剛毛で前髪に顔が隠れた「ほうき頭」の糸井が位置づけられ、掃除を押し付けられる日々。
そんな波多野は、偶然目にしたアイドルの顔を「顔面スカウター」でジャッジするほど実は外見へのこだわりが強く、同じ最底辺でも身なりに無頓着な糸井に対して密かに不満を抱えていました。
しかし、紙ゴミを取るため糸井の髪を持ち上げた瞬間、その奥から現れた素顔の美しさに波多野は衝撃を受けます。波多野の顔面スカウターは、糸井の顔を「記録至上最高の美少女」と判定し、糸井の美少女ぶりを皆に知らしめたい気持ちと、自分が格下にされる恐れの板挟みで悩みつつも、「闇に葬ることなんかできない」と心に決めます。
後日、体育の時間に波多野は糸井にヘアゴムをプレゼントします。すると糸井は「ずっと波多野さんとお話したかった」と告白し、波多野の毅然とした態度に憧れていたことを明かすのです。
そんな中、糸井がヘアゴムで前髪を結ぶと、クラスメイトたちは「めっちゃ可愛い」と驚き、波多野は静かに別れを覚悟するのでした。しかし、糸井のヘアゴムが切れて転倒し、クラスメイトに笑われる場面、波多野はついに怒りを爆発させて「この子は私だけの天使」と糸井を守ります。その後もクラスの状況は変わりませんが、2人は絆を深めることで前向きに生きる力を得るのでした。
読者からは「尊すぎた」や「今のところ波多野さんの好感度しか上がってない」など2人の絆に感動したという声が多く寄せられました。そんな同作について、作者の蒼井きとりさんに話を聞きました。
すぐに環境が変わらなくても、自分を愛し支えてくれる人がいれば人は強くなれる。
―同作を描いたきっかけを教えてください。
同性が惚れ込んでしまうほどの、圧倒的に可愛い女の子を描きたいと思ったのがきっかけです。
昨今、ルッキズム(外見至上主義)が問題視される風潮もありますが、特に女の子にとっては、美醜の問題は避けて通れないテーマだと感じています。
自分より可愛い子と出会ったとき、まず抱く感情は嫉妬かもしれません。
でも、それを凌駕する程の可愛い女子が現れて、逆に惚れこんでしまったら面白いのかもしれない、と思ったのがこの漫画の最初の着想です。
―波多野さんと糸井さんにはモデルがいるのでしょうか?
波多野の“顔面スカウター”は、私自身の「芸能人などの顔の造形に対して無意識にチェックしてしまう癖」をかなり誇張したキャラクターです(笑)。
一方で糸井には、実在のモデルがいます。私の高校時代の友人で、髪の量がとても多く、毎日苦労していた姿が印象に残っています。
―特に印象に残ったコメントがあればお聞かせください。
波多野のような皮肉屋のキャラクターに対して、応援の声をいただけるとは思っていなかったので、まずそれが大変嬉しかったです。中でも印象に残ったのは、「大学生くらいになった波多野は、美しさの研究に余念がなさそうで、きっととんでもなく輝いていそう」というコメントでした。
実は本編には登場しませんが、波多野には“将来は美容関係の仕事に就きたい”という裏設定があります。そこまで想像して読み込んでくださったことに、感激しました。
―読者へのメッセージをお願いします。
この作品は、学校内に存在する「ルッキズムによるカースト」を扱っています。その解決策として、あえて“カーストの消滅”を描くのではなく、波多野と糸井という二人の関係に帰結させました。
社会にはさまざまな問題がありますが、それらに立ち向かうためには、まずそばに「自分を肯定してくれる存在」が必要だと思っています。すぐに環境が変わらなくても、自分を愛し、支えてくれる人がいれば、人は強くなれる。そんな想いが、この作品の根底に流れているテーマです。伝わっていたら、とても嬉しいです。
現在、この作品の続編を作画中です。今回も30ページを超える長編となるため、少しお時間をいただいておりますが、ぜひ楽しみにお待ちいただけると幸いです。続編では、糸井の“剛毛の謎(?)”にスポットを当てたお話になっております。笑って楽しんでいただければ嬉しいです。
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