tl_bnr_land

「障害があるのにすごい」「私なら無理」「心が強くて尊敬」…車椅子当事者が明かす、心を削る“善意の一言” 消耗しない受け止め方は【社会福祉士が解説】

もくもくライターズ もくもくライターズ

マコトさん(仮名、30代、男性)は、大学生時代に熱心に取り組んでいたスポーツのアクシデントが原因で、車椅子ユーザーになりました。一時は、将来を悲観して生きる気力を失っていましたが、多くの方の支援と応援もあり、現在は、インターネット関連会社の営業事務をしています。

10年近くの車椅子生活で、様々な人と交流する中で、「当事者のメンタルを静かに、そして確実に削り取っていく厄介な存在がある」と振り返ります。それはいわゆる「悪気ない差別」、または「良かれと思って発された、無意識の優位性に基づいた言葉や態度」だと言います。

心が折れる「悪気ない言葉のパンチ」実録

次に挙げる3つは、頻繁に遭遇する声掛けであると、マコトさんは言います。しかし「当事者としては、とてもモヤモヤしてしまう…」と教えてくれました。

▽「障害があるのに、〇〇ができてスゴイね!」

「マコトさん、車運転できるんですか!障害があるのにすごいですね!」
マコトさんによると「褒めてくれているのはわかります。でも、この言葉の裏には、障害がある人は運転なんてできないはず、という、無意識の期待値の低さが隠れているんですよ。私にとって運転は、ごく当たり前の日常動作なのに」と語ってくれました。

このような言葉がけは、「健常者と同じスタートラインにすら立っていないのか」「一挙一動が、特別として扱われるのか」と、当事者を疲弊させてしまいます。

▽「私だったら、毎日大変すぎて無理だよ!」

「いやぁ、私だったら、毎日こんな生活、無理だよ」
マコトさんは「仕事で初めてお会いした人に、公共交通機関の乗り方や車椅子の扱いについて説明したときに、返ってきた言葉です。相手が私の状況を理解しようと努力したからこそ発せられた言葉だと思いますが…」と言葉を濁らせます。

当事者からすれば「無理」という言葉は、「あなたは不幸だ」「あなたの人生は私が耐えられないほど過酷だ」という、憐れみのようなレッテルを貼っているように聞こえます。「無理」などせず「普通」に生きており、生活しているのです。

▽「心が強くて尊敬します!」

「こんな状況でも前向きに生きておられるその心の強さ、尊敬に値します」
これも褒め言葉のようですが、マコトさんによると「私たちは特別強い人間であるべき、というプレッシャーと受け止めてしまいます。身体的なハンデを背負っているのだから、せめて心くらいは強く、前向きでいなければならない、という、社会からの無言の要求を感じてしまうのです」と教えてくれました。

障害者であっても、落ち込んでいる日があったり、弱音を吐きたいときだってあるのは、当たり前のはずなのに。

当事者流メンタル防衛術「言葉の翻訳とユーモア」

悪気がない言葉にその度に反応し、その言葉通りに受け取ってしまうことで、私たちのメンタルはすぐに消耗してしまいます。相手の真意を理解したり、重く受け止めすぎない工夫が必要でしょう。

▽「相手の言葉」を「自分のため」に翻訳する

まず、言われた言葉をそのまま受け取らず、心のシャッターを半分下ろします。そして相手の言葉の意味を「私をジャッジするもの」から「相手の無理解や価値観を表明するもの」に変えるだけで、言葉の破壊力は激減します。

「障害があるのにすごいね」=「この人は私を見ているのではなく“障害”をみているんだ」
「私だったら無理」=「自分の価値観や世界観だけでしか判断できないんだ」
「障害があっても心が強い」=「あなたに見せない私の姿があるのだから仕方ないね」

▽ユーモアで乗り切る「ジョーク返し」

しかし、愛想笑いでやり過ごすばかりでは疲れてしまいます。相手の言葉の意図を汲み取りつつ、場の空気を壊さずに、かつ自分の立場も守る「上手な返し方」も必要でしょう。鍵は「ユーモア」と「一般化」です。

「障害があるのにすごい」→「ありがとうございます。でも私が車を運転するのは、皆さんが満員電車にのって通勤することと同じくらい、当たり前のことなんです」
「毎日、大変ですね」→「お気遣い有難うございます。でも、愚痴を聞いてくれる友達もいますし、会社の上司も“普通に”接してくれるので、大変ではないですよ」

相手を消耗させないための「3つの原則」

そもそも「悪意のない言葉」の背景には、「その言葉を発した人の基準」で障害者を見ていることが多いようです。大切なのは「私なら」という物差しではなく「この人にとっては」という、捉え方のベクトルを変えることです。

マコトさんは言います。「私たちが求めているのは、特別視や憐れみではありません。ただ、一人の人間として、対等に見られること、だけなんです」と。

障害者と会話をするとき、知らず知らず相手を傷つけないために、次の3つの原則を覚えておくと良いでしょう。

①ジャッジしない

「すごい」「かわいそう」「無理」など、相手の価値観やこれまでの人生経験を、自分の価値基準で一方的に判断する言葉は避ける。

②質問から入らない

相手の障害の状況や生活について、プライベートな詮索から入らず、まずは「天気」「趣味」などといった、一般的な話題から接する。

③具体的な援助を提案する

心配する言葉よりも「何かお手伝いできることはありますか?」という提案をし、もし「結構です」と断られても深追いせず、潔く引き下がることも大切。

   ◇   ◇     

当事者にとって「悪気ない差別」は、今後も日常から完全になくなるとは限りません。しかし、そのたびに心を消耗させる必要はありません。上手くやり過ごす「心の柔軟さ」を心がけていただきたいと思います。

また非当事者の方は、目の前の障害者に対して「障害を忘れて、個性をもつ一個人として接する」ということを意識してみるだけでも、関係性は大きく変わります。

お互いがお互いに心がけるだけで、心の壁やわだかまりが消え、ほんとうの意味での人間関係が構築できるでしょう。

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース